◆女子プロゴルフツアー アクサレディス宮崎 最終日(26日、宮崎・UMKCC=6565ヤード、パー72)
1打差2位から出た主催者推薦出場の山内日菜子(26)=ライク=が、地元・宮崎市で下克上を起こした。4バーディー、2ボギーの70で回り、通算10アンダーで初優勝。2002年から施行されたQTランク(ツアーの優先出場順位)が歴代で最も低い181位のプロ8年目が、実力者を押しのけて一躍、栄冠をつかんだ。1打差2位は比嘉真美子(29)=TOYO TIRE=、2打差3位は川崎春花(村田製作所)ら5人の接戦だった。
思い描いていた夢が現実になった。グリーン脇に桜が咲き誇る18番。30センチのウィニングパットを沈めた瞬間、山内は大粒の涙を流した。プロ8年目。小学校3年生の時に初めてプレーしてから、数え切れないほどラウンドした地元のコースで悲願の初優勝を果たした。「心の底からうれしい」。山内の涙は止まらなかった。
初の最終日最終組。序盤は苦しんだ。2番、3番で連続ボギー。その時点で最大4打差がついた。ただ、山内は諦めなかった。14番でチップインバーディーを奪い、首位タイに。16番もバーディーを重ね、ついに単独首位に立った後、最後の試練が待っていた。
直後の17番で第1打が右バンカーの端へ。右足はバンカー内、左足はバンカー外という難しい状況。それでも冷静に、残り140ヤードの第2打を7アイアンでグリーンに乗せてパーセーブ。「ボールが散らばっても『何度もラウンドして、ここからも何回も打った』と自分に言い聞かせた」。フェアウェー、グリーンを外しても、耐えしのいだ。
11番ではあわや2罰打のピンチもあった。グリーン上で同組選手とラインが重なったため、ボールマーカーをパターヘッド分、ずらした。その後、山内がボールマーカーを戻さずにプレーに入ろうとした時、ギャラリーから「マーク!」という声が上がり、事なきを得た。もし、そのままパットをしていた場合、2罰打。勝負に「たられば」はないが、山内は1打差2位タイになっていた計算になる。日本女子プロゴルフ協会によると、ギャラリーの声は技術的なアドバイスではないため、問題はないという。
日米通算7勝の24歳、渋野日向子と同じ「ひなこ」。母・由美さんは名前の由来を「宮崎のお日様を浴びて、菜の花のような子になってほしいから」と明かした。この日前半は、雨が降るも勝利を決めた瞬間、初優勝を祝福するように宮崎の薄日が差した。(竹内 達朗)
◆山内 日菜子(やまうち・ひなこ)
▽生年月日 1996年4月22日。26歳
▽出身校 日章学園高から1年時に通信制の宮崎東高へ転校。卒業後、山梨学院大に入学も1年で中退してプロ転向
▽プロテスト 2016年に合格
▽最高成績 これまでは21年日本女子オープン5位
▽8罰打 今季の優先出場権を争う予選会(QT)で練習用のクラブをキャディーバッグに入れたままプレーしたため、8罰打を受け、QTランクは181位
▽実質2年シード 主催者推薦で出場した今大会に優勝したことにより、今季と来季の出場権を確保。「今年のQTランクでは下部ツアーの出場も怪しかったので、試合に出られることは一番うれしい」
▽渋野日向子 「海外でプレーしているし、尊敬しています。もうひとりの『ひなこ』も知ってほしい」