◆スピードゴルフ GDO湘南チャレンジカップ(14日、神奈川・GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス=2686ヤード、パー36)
昨年度まで青学大駅伝チームに所属していた横田知己(20)が14日、スコアとプレー時間の両方を争うスピードゴルフで異種競技デビューした。9ホールをスコア44、プレー時間17分26秒で回り、スピードゴルフスコア(SGS)61・26で3位入賞。スコア37、プレー時間17分13秒のSGS54・13で優勝した第一人者の新本達也(37)に潜在能力を見込まれ、来年の世界大会でペア競技で「日本代表」を目指すことになった。
打つ。そして、走る。
スピードゴルフは通常のストロークプレーに加え、1分を1打に換算。合計した数字(秒単位は小数点)がスピードゴルフスコア(SGS)となる。クラブは7本以下と決まっている。今大会は9ホールを2回プレーして、良い方のSGSで順位を決定。横田は競技初体験となった第1ラウンドでは4I、7I、PW、SW、パターの5本で臨み、スコア43、プレー時間22分36でSGS65・36。第2ラウンドでは4I、9I、SW、パターの4本にセッティングを変更。スコアをひとつ落としたもののタイムを5分以上縮めた。「スピードゴルフはゴルフと全く違います。初めてのスピードゴルフは難しかったけど、面白かったです。ゴルフの腕前が5割、走力が2割、スピードゴルフのマネジメントが3割という感じですね」と充実した表情で話した。
日本男子プロゴルフツアー2勝の横田真一(51)とタレント穴井夕子(48)の長男の横田知己は2年前に青学高等部から青学大に入学。原晋監督(56)に直訴して陸上部駅伝ブロックに入部した。太田蒼生、鶴川正也ら同期生が高校時代に5000メートル13分台の自己ベスト記録を持って入学する中で、知己の高校時代の自己ベスト記録は15分41秒77。入学直後に15分15秒75と自己ベストを更新したが、その後は故障や貧血などに苦しんだ。今年の箱根駅伝終了後に原監督に引退を勧告された。知己はマネジャー転向を申し出たが、原監督は「マネジャーは簡単な役職ではない。知己はマネジャーに向いていない」と厳しく通告。その上で指揮官は「2年で引退ということになったが、青学大駅伝チームのOBと名乗っていい。残りの大学2年間で自分に最も合った道を探して、その新たな道で頑張ってほしい」と激励。真剣な話し合いを重ねた結果、最終的に退部が決まった。
幼稚園から青学に通う知己は、高等部時代は陸上とゴルフの二つの競技に参加。ゴルフでは1年時に東京都高校ゴルフ秋季大会に出場し、86のスコアで75人中29位の成績などを残した。その一方、幼稚園時代から青学大駅伝チームの陸上教室に参加し、箱根駅伝への強い憧れを抱いていた。高等部3年から陸上に専念し「箱根駅伝出場」という大きな夢を追いかけたが、夢かなわず。今年の箱根駅伝4区で区間2位と激走し、トップ争いを演じた同期生の太田蒼生の給水係として約50メートル箱根路を駆けた思い出を胸にチームを去った。
1月末に青学大の選手寮を退寮し、都内の実家に戻った知己は4年ぶりにゴルフを再開した。体重を52キロから59キロに増量。フルバックティーから70台で回るようになり、来週にはアマチュア大会に出場する。通常のゴルフ競技に加え、青学大駅伝チームで鍛えた走力を生かし、この日、初めてスピードゴルフに挑戦。デビュー戦ながら高い潜在能力を示した。今大会を圧勝した新本は「知己君は経験を積めば、もっと上位に行けます」と太鼓判を押した。さらに来年、日本で行われるスピードゴルフ世界大会の競技種目のひとつのペア競技のパートナーとしてオファー。「一緒に日本代表として世界大会に出場し、メダルを目指そう」と熱く呼びかけた。
知己は転向した新たな競技に意欲満々。「新本さんにスピードゴルフを教わりながら、上を目指したい」と前向きに話した。コースで応援した母の穴井は「退部が決まる頃、電話もつながりませんでした。家に戻ってきた頃は目標を失って沈んでいました。今、新しい目標を見つけて明るくなったので、とても、うれしいし、頼もしいです」と笑顔で話した。
知己の新たなる挑戦を原監督も応援している。「素晴らしい! 2年間、青学大駅伝チームで鍛えたスタミナと体幹がスピードゴルフでも生かされていると思う。チャンスがあるなら世界を目指して頑張ってほしい」と最大級の賛辞とエールを送った。
箱根駅伝出場の夢は破れたが、横田知己は新たな道を走り始めた。この日の大会が開催されたGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスは、くしくも箱根駅伝3区と8区に隣接するコースだった。
◆横田 知己(よこた・ともき)2002年11月21日、横浜市生まれ。20歳。日本男子ゴルフツアー2勝の横田真一、タレントの穴井夕子の長男。幼稚園から青山学院に通い、父の影響で小学生からゴルフを始める。「こども記者」としてゴルフ週刊誌で連載記事を書いていた経験を持つ。箱根駅伝への憧れから陸上にも取り組む。高校1年時には東京都高校ゴルフ秋季大会で86のスコアで75人中29位の成績などを残した。同2年時から陸上に専念。高校時代の自己ベスト記録は800メートル1分59秒89、1500メートル4分2秒02、5000メートル15分41秒77。2021年、青学大に内部進学し、陸上部に入部。自己ベスト記録は5000メートル15分15秒75。166センチ、59キロ。