◆女子プロゴルフツアー ニトリレディス 最終日(27日、北海道・小樽CC=6695ヤード、パー72)
最終ラウンド(R)は雷と荒天のため中止となり、54ホールの短縮競技となった。第3R終了時に通算9アンダーで首位だった3人のプレーオフ(PO)を菊地絵理香(35)=ミネベアミツミ=が制し、通算6勝目を飾った。スタート時間を大幅に早め、途中まで行われたが“幻”となった最終Rは8番までで2打差5位だった。一方、4つ伸ばして“暫定首位”にいた上田桃子(37)=ZOZO=は中止決定に泣く形となり、天候が明暗を分けた。異例の決戦を岩原正幸記者が「見た」。
北の大地の夏空が明暗を分けた。17番パー3で行われたPO1ホール目。申ジエ(韓国)、岩井明愛(あきえ)との3人で、唯一パーセーブした菊地は控えめにガッツポーズを作った。昨年7月以来となる地元・北海道大会での2勝目。ギャラリーは安全のため会場を後にし、関係者のみが見守る異様な雰囲気の中、「あっさり終わって、これで良かったのかな」と複雑な表情を見せた。
雷予報で最終R第1組は異例の6時30分スタートに変更された。菊地は「7、8番と終わり雷も大丈夫だろうと思っていたが、中断になり予想外だった」と振り返った。9番パー5で、1メートルのバーディーチャンスにつけたところで競技が中断。その後、天候が回復次第POの実施が決まった。
これまで菊地は、POは15年日本女子オープンを含め4戦全敗。「マジで嫌」と苦手意識もあったというが、帳消しとなった最終R中断時点で2打差5位だった状況も踏まえ、「こうしてPOで勝てたので、私にとっては天気に恵まれた」と苦笑いで振り返った。
一方、9ホールで4つ伸ばし、申と並び“暫定首位”を走っていた上田は前日までの結果で4位となり「やりたかったが、こればかりはどうしようもできない」と中止を受け入れた。海沿いの小樽市はこの時期、雷雲に見舞われることが多く、20年大会でも最終Rの人数を減らす「セカンドカット」がツアーで初めて実施された。
上位選手が約半分のラウンドを消化しながら、中止となった今回の決定について「セカンドカットを実施して、イン(10番から)9ホールでやればできたのでは」という声も上がった。日本女子プロゴルフ協会関係者が「予選通過者に18ホールをプレーさせたく、スタートを早めた」と語ったように、想定以上の悪天候でもあった。予選ラウンドは異常な暑さで熱中症による棄権も出るなどした過酷な一戦。勝利の女神がほほ笑んだのは地元の菊地だった。(岩原 正幸)
◆菊地 絵理香(きくち・えりか)1988年7月12日、北海道・苫小牧市生まれ。35歳。6歳でゴルフを始める。宮城・東北高卒業後の2008年、2度目のプロテストで合格。15年のKKT杯バンテリンレディスでツアー初優勝。19年、主に上田桃子のキャディーを務める新岡隆三郎さんと結婚。姉の明砂美もプロゴルファー。趣味は音楽鑑賞、読書。157センチ。
◆最終日の一日の流れ
6時30分 第1組スタート
8時10分 最終組スタート
10時26分 雷雲接近で中断(最終組は9番をプレー中)
13時 天候の回復が見込めないため最終Rの競技中止
15時25分過ぎ 17番パー3で3人によるプレーオフ
15時40分過ぎ 1ホール目で決着。菊地が優勝
◆最終日プレーオフのみは6例目 最終Rを中止し、POのみを実施するのは1988年のツアー制以降で6例目。2021年の富士通レディース以来。3人での実施は07年スタンレーレディス以来、2例目(他の4例は2人)。今大会は規定により賞金ランクへの加算は75%に減額。メルセデス・ランクのポイント配分は短縮の場合も変更はない。4位以下は前日までの成績。