中島啓太、安定感支える圧倒的ゴルフIQ 小学生時の記憶鮮明、球筋何通りも記憶…担当記者が見た


4番、ティーショットを放つ中島啓太(カメラ・豊田 秀一)

4番、ティーショットを放つ中島啓太(カメラ・豊田 秀一)

◆男子プロゴルフツアー カシオワールドオープン 最終日(26日、高知・Kochi黒潮CC=7335ヤード、パー72)

 プロ2年目の中島啓太(23)=フリー=が初の賞金王を決めた。今季出場22戦中、3勝を含むトップ10が16回という圧倒的な強さを発揮。中島の賞金王への道を担当の高木恵記者が「見た」。首位で出たプロ12年目の鍋谷太一(27)=国際スポーツ振興協会=が68をマークし、通算14アンダーでツアー初優勝を飾った。最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップ(11月30日開幕・東京よみうりCC=報知新聞社主催)出場の30人が内定した。

 左に跳ねたボールが、スライスラインを描いて真ん中からカップに落ちた。最終18番パー5。中島はピン右12ヤードからのチップインイーグルで締めた。両腕を突き上げ、天を仰いだ。「彼の力だと思う。賞金王になれてうれしい」。中島を応援してくれていた幼なじみが亡くなったとの訃報(ふほう)が届いたのは最終日前日。「彼のためにも今週で賞金王を決めたいと思っていた。見守ってくれていると信じていた」。天国に吉報を届けた。

 昨年9月にプロ転向し、ツアーを転戦してきた。出場22戦中、3勝を含む16試合でトップ10入りと抜群の安定感を誇る。5月から6月まで5週連続で最終日最終組に入り、優勝争いに加わった。体だけではない。頭と心の疲労は相当なものだった。朝に飲んだコーヒーをホテルの部屋で吐くほどに、疲労困憊(こんぱい)だった。「それを経験して一回、だめになって克服して、8月の横浜ミナトチャンピオンシップで勝てたことは大きかった」。リードしている時の勝ち方を、つかんだ試合でもあった。

 中島のゴルフIQの高さを、関係者が話題にすることは多い。本人は「記憶力はめちゃくちゃある」と口にする。「描いているボールの軌道が何通りもある」。第2打地点に立った時にさまざまな球筋が浮かぶ。「小学生時のラウンドの記憶もある。一緒に回った選手の球筋も思い出せる。全部頭の中に入っている。ストックがたくさんある」。マネジメント力がずば抜けて高い。だからボギーも少ない。

 「息抜きはバレーボール」という意外な一面もある。叔父が地元でチームを持っており、今でも大会に出場するというから驚きだ。5試合ほど出場したことがあり一度、MVPを取ったことがある。ポジションはセンター。「ゴルファーとして見られないので居心地がいい。リフレッシュになる」。今季も試合の合間をぬって、3試合ほど参戦した。

 最終戦の日本シリーズJTカップでは、羽川豊の23歳363日を上回る23歳162日での最年少Vと、ツアー史上5人目の2億円突破がかかる。「今週勝てなかったことに悔しさはある。来週勝ちたいと思っているので、まだ喜ぶのは早い」。中島の底力は、こんなもんじゃない。(高木 恵)

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