「祭典」マスターズを10倍楽しむトリビア 開幕前日の恒例イベントは女子元世界ランク1位も「楽しかった」


2018年マスターズのパー3コンテストで、妹の藍さん(右端)ら家族をキャディーに起用した宮里優作(左から2人目)

2018年マスターズのパー3コンテストで、妹の藍さん(右端)ら家族をキャディーに起用した宮里優作(左から2人目)

 男子ゴルフの2024年メジャー初戦、マスターズは4月11日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7555ヤード、パー72)で開かれる。世界中の名手たちが集う年に一度の「ゴルフの祭典」開幕前に知っておいて損は無い、10倍楽しむためのトリビアを紹介する。

 ◆「パトロン(後援者)」 マスターズでのギャラリーの呼称。かつてオーガスタナショナルGCの会員が、資金援助して大会運営に行ったことに起因する。現在も入場料やグッズ販売の売上から、賞金額が決められているため。マスターズ委員会からの正確な発表はないが、大会週は練習日から連日約5万人が訪れ、大行列のグッズショップでは、約50億円以上もの大会グッズが毎年売れているとされている。

 ◆携帯電話や通信機器の持ち込み禁止 プレーを最優先するため、会場内には観客も報道陣も携帯やタブレットなどの通信機器は一切持ち込み禁止。見つかれば退場処分に。米国内通話は無料の公衆電話が、コース内に8か所設置されている。スコアなどを示す電光掲示板はなく、伝統的な白く巨大なスコアボードをボランティアスタッフが手動で動かしている。

 ◆「パー3コンテスト」 1960年から本戦前日の水曜日に、練習場脇に位置するショートコース9ホール(パー27)を利用して開催されている。選手が子供にバッグを担がせたり、トリックショットを披露したりして盛り上がるイベント。2012年には石川遼が妹・葉子さん、弟・航をキャディーに起用。18年には、宮里優作が両親や妹の元世界ランク1位・藍さんらをキャディーに起用。最終9番でティーショットも放った藍さんは「楽しかった」と話した。海外勢でも俳優のペ・ヨンジュンや英国の元人気バンド、ワン・ダイレクションのホーランがキャディーに起用されて話題を集めた。75年&81年に青木功が、88年には中嶋常幸が優勝しているが、優勝者はその年のマスターズで勝てないというジンクスも有名だ。02年には伊澤利光が5番、6番で連続ホールインワンも記録している。

 ◆キャディーの番号 伝統的な白いつなぎの左胸に緑色で数字が入っている。前年度優勝者は「1」。その他は登録受付順となっている。

 ◆広告なし 他のメジャーでは、観客席の壁などにスポンサー企業の広告看板が目立つが、「世界一美しい」と呼ばれる景観を生かすため、オーガスタには一切ない。13番の「アザレア(西洋ツツジ)」など1~18番までの各ホールに、コース内に咲く植物の名前が付けられている。

 ◆激しいアップダウン 打ち下ろしの10番は、ティーグラウンドからの高低差は18ホールで最も大きくニューヨークの「自由の女神の高さと同じ」約46メートルもある。毎ホール起伏が激しく、かつて松山英樹のバッグを担いだ進藤大典キャディーも「歩くのは世界一しんどいコース」と話したほどだ。

 ◆「アーメンコーナー」 スコアメークの鍵を握る11番~13番の難関ホールの呼称。「神に祈らなければいけないほど難しい」という意味で「アーメンコーナー」と称される。グリーン左に池のある11番パー4、グリーン手前に小川が流れる12番パー3、左ドックレックでグリーン手前に小川がある13番パー5。3ホールとも、上空を舞う風の読みが重要となる。

 ◆コース改造 近年の男子プロの飛距離アップに対応し、この数年は毎年のようにホールの拡張がなされている。今年は2番パー5のティーグラウンドが左後方へ下がり、10ヤード伸びて18ホール最長の585ヤードとなった。コースの全長も史上最長7555ヤードとなる。

 ◆「クロウズネスト」 クラブハウス屋根裏にある簡易宿泊施設の通称(カラスの巣)。大会中はアマチュア選手が優先的に泊まることができる。緑のじゅうたんと白い壁に囲まれ、ベッドは緑の毛布に純白のシーツ。1泊7~12ドル(約1060~1820円)という。タイガー・ウッズ(米国)も初出場の1995年に泊まり、2019年大会にアマチュアで出場した金谷拓実が日本人で初めて宿泊した。

 ◆「チャンピオンズ・ディナー」 開幕前々日の火曜夜に歴代優勝者が集って開催される晩さん会のこと。メーンメニューは前年の覇者が決める。1952年大会をディフェンディングチャンピオンで迎えたベン・ホーガン(米国)が歴代勝者全員を夕食に招待したのが始まりとされている。21年に優勝した松山英樹は翌22年のディナーで、和食中心に刺身と握り寿司や焼き鳥、A5ランクの宮崎和牛のリブアイなどを提供して、参加したレジェンドたちから絶賛された。

 ◆始球式「オナラリー・スタート」 1963年以降、大会初日の第1組スタート前に1番ティーグラウンドで行われている開幕を告げる恒例イベント。ティーショットを放つ名誉スターターは、歴代の名選手が担当。昨年はマスターズ歴代最多6勝のジャック・ニクラウス(米国)、3勝のゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)、2勝のトム・ワトソン(米国)が務めた。

 ◆「グリーンジャケット」 オーガスタナショナルGCのメンバーが1937年から着用を始めた緑色のブレザー。名誉会員として迎えるとの趣旨で、49年大会のサム・スニード(米国)から優勝者に贈られるようになった。表彰式で前年覇者が新王者に着せる儀式が有名。正式名称は「グリーンコート」で、左の胸ポケットにコースのエンブレムが縫いつけられ、ボタンは3つ、デザインはシングル。その年の優勝者以外は、オーガスタ以外での着用はNGだ。また、優勝者には、クラブハウスをかたどった約50キロの銀のトロフィー&レプリカ、金メダルも贈られる。

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