◆パリ五輪 第10日 ▽ゴルフ(4日=最終日、ル・ゴルフナショナル=7174ヤード、パー71)
男子の最終ラウンドが行われ、3打差4位から出た松山英樹(LEXUS)が銅メダルを獲得した。6バーディー、ボギーなしの65で回り通算17アンダー。女子では前回の東京大会で稲見萌寧が銀メダルを獲得しているが、男子では初の表彰台。銅メダルをかけたプレーオフの末に敗れて4位だった東京五輪の悔しさを晴らした。
世界ランク1位のスコッティ・シェフラー(米国)が62をマークし、19アンダーで金メダル。トミー・フリートウッド(英国)が18アンダーで銀メダルだった。米ツアー1勝の今田竜二氏が松山のプレーを解説した。
松山選手は3打差4位からのスタートで、最終日は攻めていかなければいけない状況でした。会場となったゴルフナショナルはごまかしが効くコースではありません。池が絡み、ラフに入れてしまうと“代償”を払わなければいけない、本当の意味で力のある選手が上位に来るコースです。
その中で松山選手に向いていたコースとも言えます。先々週の全英オープン(海沿いのリンクスコース)は「線」で攻めていかなければならないのに対し、今週はポイント(点)で攻めていける。65の素晴らしいスコアではありましたが、パッティングで惜しい場面もたくさんあり、あと2つ、3つはいけたのではという内容でした。本当に1センチの差、いや数ミリの分の差でした。
私も(国別対抗戦の)W杯に2度出場しましたが、国を代表してプレーするのは本当に難しいと感じました。国を背負ってゴルフをすることは別格のプレッシャーがあります。ラーム選手(スペイン)の後半の失速にもそれが表れていたと感じます。印象に残っているのは今週、松山選手がインタビューで「内容は関係なく結果を残したい」と話したこと。彼は内容を重視する選手ですので、それくらいガムシャラにメダルを取りに行きたい、良いスコアであがりたいという気持ちが出ていました。最後、バーディーパットを外した時の表情にも表れていました。
この銅メダルは、日本のゴルフ界に歴史を刻んだ、とても意味のあるものです。五輪ゴルフはリオ(16年)で112年ぶりに復活してまだ3回目。マスターズや全米オープンなどのメジャー大会も年数を重ねていくことで歴史が刻まれ、伝説が生まれました。そういう意味では五輪ゴルフ競技の歴史はまだ浅いですが、ローズ(英国、16年)、シャウフェレ(米国、21年東京)、シェフラー(米国、今回のパリ)と素晴らしいメジャー覇者たちが勝ってきていて、これから五輪ゴルフが“第5のメジャー”、いや“第1のメジャー”となる可能性も秘めています。
松山選手は母国愛も、責任感も強い選手です。メダルを取るのがまず第一目標だったでしょうし、それが達成できて良かったと思います。次は4年後で36歳。過酷な状況で毎週プレーしている中、練習量が他の選手よりも多いため、けが(のリスク)とうまく付き合っていかなくてはなりません。マスターズ(21年)を勝った時点で超一流の域に達していますから、しっかりけがをしないようにゴルフを続けてほしい。
欧州での(全英オープンなどを含む)4週間はかなりタフだったと思いますけど、体を休めて、プレーオフシリーズの最終戦、ツアー選手権までに調子を整え、フェデックス・カップ年間王者を目指して頑張ってほしいと思います。(プロゴルファー)