驚異のエージシューター田中菊雄の世界7 武藤一彦のコラム


 ドライバーからアプローチ、パターまで広く力感あふれるワイドスタンス。両手をしっかり伸ばしたアドレスは打ち気満々で力強い。ボールの位置は左わき延長戦,左かかと前。右足を大きく引いた45度の極端なフックスタンス。だから、打ち手の田中さんにとっては、球は左、しかも遠くにある感じだろう。両腕の作る三角形は、そのボールより後ろで終始使う体勢である。

 

 実際のスイング時、三角形はアドレス、インパクトで一致する。「インパクトはアドレスの再現である」とよく言われる、あれである。田中さんのスイングにもそれがある。いや、その追求ばかりだ。バックスイング、ダウンスイング、そしてインパクトまで、常にアドレスの位置に戻る意識がある。その証拠にスイングの間中、左腕は左胸の位置に常にある。だが、大方の人と違うのは、インパクト、即フィニッシュのパンチショットだ。これこそ田中さんの身上である。そのスイングはインパクトでの再現を目指して徹底的に作られている。工夫を凝らし整えられている。81歳でドライバーの飛距離250ヤード。160回を超えるエージシュートを日常当たり前のように出す秘密である。

 

左手の伸びた力強いアドレス。ロングヒッターの条件だ

左手の伸びた力強いアドレス。ロングヒッターの条件だ

 1.球を遠くに置き、手を伸ばしてボールを打て

 2.バックスイングを大きくとり右手でたたく

 3.クラブヘッドがインパクトで追い越すインパクト即フィニッシュをめざそう

 

 田中スイングの特徴を分析、列記すると以上のようになる。

 

 田中さんは言う。「スイングなんて考えたらだめ。イワシの頭も信心からっていいますね。いいと思ってやること、結果を出すことが求められるのです。スイングはその繰り返し。あとは考え方と想像力。勝手にスコアを作ってくれます。ゴルフは1ラウンドでしっかり球を打つのは、わずか30発ですよ。あとはアプローチとパット。考えすぎはいけません。ゴルフに必要なひらめきがなくなるんです」

 

  球を遠くに置き、手を伸ばして球をたたけー

 

 「年を取ると体が硬くなったりしてバックスイングが大きくならない。これは宿命です。また若い人でも飛ばそうと思うと前ばかりに気持ちが行くから後ろが小さくなる。いずれにしろゴルファーっていうのは、前に行きたがる競走馬みたいな人が多い。だからみんなバックスイングが上がらない。手を伸ばすんです。球を遠くにおいて左手を伸ばす。当てるより振る。アドレスで背中を伸ばし大きく構え。バックスイングを優先させるのです」

 

 手を伸ばし遠くにボールを置けば、手が伸びる。アドレスでの左手が大事だ。アドレスの射程を決める左手はしっかり伸びていればスイングの円弧を大きく安定させてくれる。左がしっかり伸びていれば右手もインパクトで伸びるだろう。強い球が出る。次回は右手の使い方。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。