驚異のエージシューター田中菊雄の世界11 武藤一彦のコラム─田中さんとクラブ 10ラウンド連続でエージシュートをやる驚異のパワーを支える“相棒”を探る


 生涯で一回やれば快挙と言われるエージシュートを162回。惜しくも1打足りなかったことは200回を超えるという田中さん。そんな田中さんはどんなクラブを使っているのか。

 

 最新の仕様のセットは手元にあるが、興味のない人にはわかりにくい。それと、シャフトやヘッド容積、グリップまで話が及ぶときりがない。ここは、誰でもわかる範囲で探ることにして、まず14本の内容から。

甥の耕太郎さんと

甥の耕太郎さんと

 ウッドはドライバーから3、5、7番。いずれもテーラーメイド。9番だけはプロギアの24度。ドライバーのロフト12度。ドライバーの長さは45・75度。長尺だ。硬さはサンドウエッジまですべてR。グリップも統一されている。

 

 アイアンは6番からPW(ピッチングウエッジ)までヨネックス。6番でロフト25度、9番で39度。シャフトはカーボン。注目しているのは2本のAW(アプローチウエッジ)とSW(サンドウエッジ)。いずれもキャスコ。44度と48度のAW2本とサンドウエッジは58度。いずれも低重心の広いワイドソール。これらが絶妙のタッチだ。ちなみにパターはオデッセイ。ヘッドは四角形。スチールシャフトに四角い太いグリップ。「クラブに関してはこれまでに使ったのは3セット。ドライバーは堅いシャフトのクラブを力いっぱいたたいてきた。パワーヒッター志向ですから。アイアンはラインと距離を合わすクラブだからこれがいいと思ったら自分のものにするために長く付き合うのです。イワシの頭も信心から、といいますでしょ? ハハハハ」と笑った。35歳から始めたゴルフは、今年で46年。10数年、クラブを替えない感覚派の田中さん。職人の域に入ったようだ。

 

 この4月に変化が訪れた。ドライバーはじめウッドクラブを従来の堅いものから柔らかいSRの現在のものに替えた。

 

 きっかけは今年4月の関東グランドシニア選手権予選(東京五日市カントリークラブ)出場だ。大会前、息子さんの一人が柔らかいRシャフトのセットを「この方が、球が上がりやすいよ」と持ってきた。打ってみるとはじめは右へ飛び、苦労したが、そこは工夫して「遠くに置きフェースをかぶせるなどするとすごく飛んだ」と“新発見”。大会コースにアップダウンがありセカンドでは高い球が必要だったのでウッドもいい感じだった。これが正解。4月20日、81のエージシュートで大会出場を決めた。81歳の予選突破は大会史上最高齢記録。その上エージシュート。主催の関東ゴルフ連盟から表彰された。

 

 今では「ドライバーはしっかり当たると230から250ヤードは飛ぶ。軽くて自由になりすぎのはいやだったが、高い球を打とうと思うとコントロール性能もいい。慣れたらいけると思った。いまはこれならもっといいスコアが出るな、と自信につながっている」。

 

 田中さんは今年9月、10ラウンド連続エージシュートをやってのけた。すなわち8月30日のよみうりGCでの81に始まり9月14日の木更津GCまでの10ラウンド連続である。そのコースたるや6コースにわたるのである。相性の良さだけではない、本物のレベルの高さは、安定したドライバーショットの勝利、と受け止めている。

 

 次回はアイアンについての考察。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。