男子プロゴルフツアーの今季最終戦、日本シリーズJTカップは12月1日から4日間、東京・稲城市の東京よみうりCCで行われる。3年連続9度目の出場となる昨年覇者の石川遼(25)=カシオ=が開幕を前に、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。松山英樹(24)=LEXUS=とコンビを組んだISPSハンダ・ワールドカップは6位で終戦。その鬱憤(うっぷん)を晴らし、9月に亡くなった憧れのアーノルド・パーマー氏(享年87)に習った“勝利の合図”を大会連覇で披露することを誓った。(聞き手・浜田 洋平)
―優勝を狙ったW杯で6位。もう前を見据えている?
「英樹から学ぶことが非常に多かった。技術的に足りないところも感じた。お互いに不完全燃焼。最後まで全力を尽くしたけど、本当に絶好調という感じでできなかったので、鬱憤を晴らしたいなという気持ちがある」
―学んだものとは?
「やっぱり体の差もあるけど、世界のトップの選手でも苦しむ時があるんだなと、一緒に回って思ったし、うまくいかない中でもドライバーとアイアンの安定感をすごく感じた。調子が良くないと言いながらも、底の部分が高いので、ハマると絶対に勝てるという技術の高さを感じた」
―2月から約半年間は腰痛で離脱、3月に結婚、8月末の復帰直後に国内ツアー優勝。今年はいろんなことがあって、その中でパーマーさんが亡くなった。
「中学1年の時にパーマーさんの主催するジュニアの大会(56位で予選落ち)に出た。当時からアーノルド・パーマーという選手がどれだけ偉大か分かっていた。プロになってもお会いする機会があって、どこにいても常に人気者。大スターなので憧れもすごくあった。(米国の)家もパーマーさんのコース【注1】の敷地内にある。カートでコースまで3、4分で行けて、練習させてもらって。多少だけど、縁があったのですごく光栄。自分の年齢で会える人ってなかなかいない。そういう意味で恵まれている」
―パーマーさんは1966年に東京よみうりCCでのW杯(当時はカナダカップ)で優勝。知っていた?
「そうなんですか? 知らなかった」
―亡くなった年に自身もW杯に出て、翌週に東京よみうりCCで試合。不思議な縁がある?
「どうなんですかね(笑い)。ビックリですね。東京よみうりCCでW杯をやっていたのもビックリです。すごく歴史のあるコースなんだなって改めて思う」
―パーマーさんと初対面の時(09年3月に出場したアーノルド・パーマー招待、80位で予選落ち)、「勝って親指を立てるポーズをやれ」と言われた。
「かすかに覚えている。(自分も)今までプレーしていて自然と出ちゃう。やっぱりパーマーさんはサムアップのイメージがすごい強いですよね。(日本シリーズで)できたらいい。勝てばやりますよ。バーディーで? やらない。優勝しかないでしょ」
―ゴルフ界への功績も大きい。
「プロゴルファーとしての地位を築いてくれた人。あそこまで実力と人気があるのは本当にすごい。次世代につなぎたいのは、ギャラリーに対しての振る舞い方、試合でのパフォーマンス。自分も小学生の時から、強くて人々を引きつけるゴルファーになりたかった。見ている人たちが盛り上がって、初めて自分もそこで楽しいと思える。パーマーさんから学んだというか、自分は無意識に感じてる」
―日本シリーズの連覇は過去5人【注2】。肩を並べるチャンス。
「去年は自分のプレーをして優勝できたという感覚がある。去年以上のいいパフォーマンスを出して優勝したい」
―30日にコース入り。強行日程だが。
「準備期間が短いことは割とある。米国から帰ってきて時差があると、どんなに早く(コースに)入っても火曜の夜になる。豪州と日本は時差がない(日本時間プラス2時間)。体調をしっかり整えれば、水曜のプロアマ戦から出られる。あとは自分の体調管理(次第)だと思う」
―9月に被災した熊本・菊陽町の菊陽南小を訪問した。
「また、足を運びたい。子供たちの成長を見られるし、自分の刺激にもなる。子供たちの強さを感じて、力をもらっちゃいましたからね。いいニュースを届けたい」
―腰痛で離脱中も応援してくれた人がいた。
「自分にとって今年最後の試合になる。けがをする前と後でパフォーマンスが落ちたとは思っていない。日本シリーズでプレーする時は『今年も応援してくれてありがとうございました』という気持ちを常に持っている。実際に見に来てくれる人にも、テレビで観戦してくれる人にも、感謝の気持ちでプレーしたい」
【注1】パーマー氏がコースを設計した米フロリダ州ベイヒルGC。石川が出場したジュニア大会の「HPボーイズ」や、09年の「アーノルド・パーマー招待」が行われた。
【注2】過去の日本シリーズ連覇は5人(尾崎将は2度達成で6例)。河野高明(67、68年)、尾崎将司(71、72、95、96年)、青木功(78、79年)尾崎直道(90、91年)藤田寛之(10~12年)
◆石川 遼(いしかわ・りょう)1991年9月17日、埼玉・松伏町生まれ。25歳。小学1年からゴルフを始め、東京・杉並学院高1年の2007年5月、プロツアー初出場のマンシングウェアKSBカップで15歳8か月3日の世界最年少優勝(当時)。08年1月にプロ転向、09年はマスターズに日本人最年少出場。同年、世界の主要ツアー最年少の18歳2か月19日で賞金王獲得。国内通算14勝。家族は両親と妹、弟。175センチ、72キロ。