驚異のエージシューター田中菊雄の世界19 武藤一彦のコラム─ゴルフはテーマを持ってやる。うまくいったらそれを繰り返すのです。


 生涯で1回はやってみたいエージシュートを180回もやっている田中さん。今年(2017年)3月3日に82歳になるが、驚くなかれ、81歳のシーズンだけで77回のエージシュートをやってのけ「今年3月の誕生日までに通算200回の大台に乗ると思う」と豪語する。

 

 エージシュートは年齢との追いかけっこ。若いときのレベルを、年をとっても維持できれば簡単に出るが、田中さんはそのレベルに入った。自信を持って言い切るのだ。「80歳の爺さんが80ぐらいのスコアで回る。それが結果です」

 

 こんなことがあった。60歳の時、羽川豊プロと一緒にラウンドした。田中さんの向上心に感心したプロは田中さんのスイングを見ていった。「その8の字スイングを直しなさい。そうすれば今の12のハンデが6まで行きますよ」。

 

羽川豊プロ

羽川豊プロ

 35歳でゴルフを始めたレートゴルファー(遅く始めたゴルファー)の田中さん。バックスイングを外にあげ、トップからインサイドに引き込んでたたきハイフィニッシュ。シャフトは堅いXシャフトでいっぱしジャンボ尾崎を気取っていた。

 

 年とともにスイングは小さくなる。早打ちになる。特にバックスイングが上がらなくなる。そんなテーマをもらってスイングの改造が始まった。72歳の時、ハンデは6になっていた。

 

 「ボールをたたくにはどうするかがテーマだった。サル腕でインパクトがうまくいかない。そこで左甲を上に向けたフックグリップ。球から遠くに立ちしっかり伸ばした。それだけで球はつかまった。遠くに立ちしっかり手を伸ばすからバックスイングが上がる。それではとスタンスをフックにしたらさらに上げやすくなった」。田中さんの基本となる右45度を向いたスタンスの発見だ。まさに発見だった。極端なフックスタンスからドライバーもアイアンもフェースを飛球ラインにスクエアに向けた。遠くに立ちしっかりインパクトで手を伸ばしスイングすると、球は左へ行かなかった。ストレートからフェードの伸びのあるいい球が出た。

 

 「遠くに立ち、手を伸ばす。スタンス、グリップ、姿勢がしっかりするとインパクトで顔の左に壁を感じた。クラブが働くスイングができたのだ。テーマを持ってやることの大切さを知った。そしてうまくいったらそれを繰り返すこともわかった。できないからやらないのではなく、やろうとしないことが、一番いけないことを知った」

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。