驚異のエージシューター田中菊雄の世界20 武藤一彦のコラム─田中ゴルフはバックスイングが生命。「クラブを働かせて追求すれば必ずうまくいく」と徹底してバックスイングにこだわる。


 「上がったものは下りてくるが上がらないものは落ちない。しっかり上げないとクラブも下りようがありません。クラブを働かせるとは、しっかり上げてやることが基本です」

 

 田中さんに言わせると、バックスイングが小さいとロクなことがないそうだ。よく言われる大工さんのトンカチである。大工の棟梁はかなづちを真上に上げ頭を落としてトントントン、軽く落とすように釘を打つが、駆け出しは、かなずちを握りしめ力で叩き込みにかかるからくぎは入っていかない。

 

 「ゴルフもインパクトなんです。ヘッドアップするな、壁を作れ、しっかり叩け、とプロアマ問わずやっているが、そのやり方は誰も教えない。でも、バックスイングをしっかり上げられれば、インパクトは必ず良くなるのです。」

 

 田中さん、クラブを上げることに取り組んだ結果が、クローズドスタンス。左グリップをかぶせたフックグリップだ。だが、こういうとある日、突然、変えたらうまくいった、と誤解することになる。こうなるまでに5年、10年の時日がかかっている。今のスイングが完成するまでには、段階というステップを踏んでいるのだ。

 

 「まずフックで飛ばしたい、という欲求から始まった。年齢を重ねパワーも柔軟性もなくなってこの先、俺は何を目指すか、から始まった。そこでスタンス、グリップをかぶせた。すると強いフックが出すぎた。そこでクラブをかぶせて構え徹底してヘッドの返りを抑えた。かぶせたフェースがインパクトでかえってしまうとフックになるが、面を変えなければストレート。それならと、左グリップをさらにかぶせて手を伸ばし絶対、クラブフェースを変えなくしたらストレートからフェードになってティーショットがひっかからなくなった」―田中ゴルフの発見である。このくだり、優勝争いで必ずフックして涙をのんだトッププロでもハッ!とする響きがあるはずだ。

 

 田中スイングは球が左へ行かない。インパクトで壁ができる。ヘッドアップも過去のことだ。プロにもアマにも、その心に響くヒントがある。さあ、はじめの一歩のスタートだ。エージシューター名人の田中スイングのレッスンは次回から。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。