驚異のエージシューター田中菊雄の世界30 武藤一彦のコラム─究極のアプローチ,バンカーショットができればロブショットはじめ上げるアプローチは名人並だ【技術編】


 田中さんのアプローチ。究極の技は、落としどころを決め、上げて止めるバンカーショットだ。うまい。

 

広いスタンス、低いフォローのバンカーショット

広いスタンス、低いフォローのバンカーショット

 あえてアプローチと銘打ったのは1点に落とすバンカーショットはピッチショットの究極だからだ。エージシュート名人の上げて、止めるわざは、見るものを驚かせる。そこには1点に落とす攻めの姿がある。スコアメイクはアプローチからと覚悟を決めた者の迫力がある。

 

 田中さんのルーティン。落としどころを決める。フェースをピンへ向け、左足を深く曲げ左足体重。右足は後ろに引く広いスタンス、右膝は左に寄せ膝が砂につくのではないかと思うくらい送る。強固な左足ウエート、右ひざを左に引き寄せた構えはインパクトの体勢をアドレスで作って完璧だ。

 

 スタンスは田中スイングの基本だ。こうして右ふところ(懐)を広くするとしっかりバックスイングでき、インパクトで手が球に戻りやすい。インパクト→即フィニッシュでヘッドを砂に打ち付けボールを上げる理想的な体勢、見事なアドレスだ。

 

 この後にくるルーティン。ヘッドを浮かしボールに何度もワッグルする。ワッグルは左手甲を上に向けた左グリップと、添えた右手の感覚を整えるためだ。球の前で手首だけのワッグルをすることで体幹感が整う。そして、次にトップの高さまで何度かシャドースイングだ。1回、2回、ときには3回。トップに上げてアドレス。上げてドレス…。

 

 「上がったものは下りるが、上がらないものは下りようがない」と行うバックスイングをしっかり上げる、という田中ゴルフの基本はすべてのショットの“必需品”である。ドライバーからパットまですべてのショットの前に必ず行われる“儀式”である。

 

 「バックスイングは飛ばしたいときほどしっかり上げる、寄せたいときほどしっかり上げる。打ちたいときもしっかり上げ、ゆっくり打ちたいときもしっかり上げる。バックスイングは私のスイングの万能薬です」しっかり上げてしっかり打ち込む。左体重を維持し、しっかり上げしっかり打ち込むとインパクト即フィニッシュ。ちなみにサンドウエッジはKASCO D-MAX、ロフト58度、ワイドソール、44度と48度のアプローチウエッジとの3本セットである。

 

 バンカーショット。誰でも落としどころを決めて打つショット。ボールの後ろの砂の10センチに打ち込んで10ヤード、5センチ後ろなら20ヤード。砂の取る量で距離は変わる。砂の質、グリーンの硬さ、風向きでスピン量も違ってくる。

 

 サンドウエッジの底、バンスの厚みをボールの後ろにどすん、と入れることで球を上げる。バックスイングで手首をコックしたらインパクト直後までコックをほどかず打ち抜く。手首をほどくとエッジが砂に刺さり、砂が爆発しないミスになる。バンカーはエクスプロージョンショット(爆発)。バンスで砂をたたく。このショットは、アプローチではピッチショットの延長。バンカーがうまい人は上げる球、ロブショットもうまい。柔軟な右手の使い方が不可決である。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。