驚異のエージシューター田中菊雄の世界54 武藤一彦のコラム─エージシュートを認める年齢は満年齢か?それとも数え年か?論議を呼ぶ田中さんの200回エージシュート


 エージシュート200回という驚きの記録に到達した田中さん。これをきっかけに達成年齢について触れておきたい。
 エージシューターの年齢については、満年齢と数え年が採用されており田中さんの200回の内、満年齢で認定されているのが196回、数え年が4回ある。
 何でそんな複雑なことになっているのか。満年齢が世の中の常識なのだからそれに従えばいいじゃないかという意見もあるが、そこには制度が変わった、という日本だけの事情がある。

 

100回記念の時の田中さん

100回記念の時の田中さん

 200回を目指した田中さんに最近、こんなことが実際に起こっている。田中さんは5月はじめ、新潟で地元財界の知人、友人と2日間ゴルフしたときのことだ。

 

 5月3日、中条CCを41,42の83でホールアウトすると「おめでとうございます。エージシュートです」と祝福の渦に巻き込まれた。
 田中さんは満82歳、スコアは83。本来なら1歳及ばないのだが、数え年なら83歳。日本の習慣で”おめでとうございます“と認定された。198回目のエージシュートだった。

 

 スコアカードに同伴競技者、さらにキャディーさんのサインをもらいコースに提出、認定された。「中条CCでは数え年オーケー。同コースでは初めてのエージシュートだったそうで、コース中がそれはもう大喜びしてくれました」過去にも3回、数え年での記録もある。コースや周辺の人がみんな喜んでくれる。田中さんに拒む理由はない。

 

 だが、その翌日のことだ。同じ新潟の別のコースでラウンドするとスコアはまたも83。だが、今度は、エージシュートは認められなかった。なぜならそのコースは「エージシュートは満年齢に限る」と規定されていたのである。

 

 これが日本のエージシュートの現状である。日本では生まれた日を1歳とする数え年(かぞえどし、と読む)と満年齢がある。前者は戦前までの日本。それが終戦後、欧米にならって満年齢に制度を変えた。尺貫法と同じでメートルやキログラムになじめなかった人々が戦後長らく古い習慣を変えられなかったように、尺度とは感覚であるのだろう。中でもゴルファーはエージシュートだけはいまだに数え年を認めている。ゴルフはミスのゲーム。その反動で喜べることは積極的によろこぶべきだ、そんな風潮があるのかもしれない。ホールインワンとともにエージシュートは人気の2大イベントとなっている。

 

 ゴルフではヤードやフィートが使われ、通産省の通達でそれをメートル、センチに切り替えようとしたが、結局、欧米の慣習にならって今がある。制度が変わったのだからそれに従うべきだろう?なんて議論は成り立たない。数え年を認めなければ戦前のエージシュートはすべて抹殺される。そんな事態は避けなければなるまい。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。