ニューグリーンで新たに始まる新時代シリーズに向けて(1/2)


ニューグリーンで新たに始まる新時代シリーズに向けて(1/2)
武藤一彦

 日本にゴルフが伝来したのは1901年、神戸・六甲山にできた4ホールがきっかけである。別荘に住む英国人たちは故郷をしのんでティータイムをたのしんでいるとどうしてもゴルフをやりたくなった。そこで作ったのが、神戸ゴルフ倶楽部六甲コース。今年で115年、日本最古のゴルフコースである。
 笹や草を刈り邪魔な岩を掘り起し最初にグリーンを決め、ティーの場所を定めたと思われる。ゴルフの目的は穴にボールを入れることであり、その打数が少ないものが勝つ。穴をうがちグリーンを造れば、あとは簡単、ティーの場所を決めればそこがスタートだ。フェアウエーなどなくても、自然との闘い、そこに入れるのもゴルフだ。
 六甲のグリーンは砂と粘土を混ぜて固めたサンドグリーンだ。グリーンなら芝でしょう、というが、芝を養生し刈り込んで作るパッティンググリーンができるのははるかあとのこと。当時の土木技術では砂を固めるしかなかった。グリーンはお皿状にし、回りを高くした。ふちをつけないとボールが止まらず外に出てしまうのでお皿状にするしかなかった。
 六甲には少年キャディーがいた。その中からのちにプロゴルファーが誕生することになる。少年たちはボールがグリーンに乗ると「入った」と叫んだそうだ。グリーンに“入ったボール”は周りの土手に当たって跳ね返ると、こっちでまたはねかえり止まるまでみんなでひやひやしたというから、ほんとうに最初のゴルフは大変だったのだ。

 六甲ものちにグラスグリーンに変わるが、ちなみに日本初のグラスグリーンのコースは1906年、横浜・根岸の競馬場内にできた。
日本における3番目のゴルフ場、ニッポンレースクラブ・ゴルフィングアソシエーションのグリーン。いまのは横浜根岸森林公園にあった。

 グリーンはなぜグリーンというか。それは芝で緑色なのでグリーンなのである。
 当たり前のことだが、それを知った時の衝撃は忘れない。ドバイ首長国連邦の砂漠にあるコースでプレーをしたことがある。グリーンは石油と砂を固めたサンドグリーンでやや砲台,全面砂漠なのにバンカーは砂を掘って凹んでいた。
 すべてが砂のコースのローカルルールにはグリーンのことをブラウンと書いてあった。ブラウン、茶色、砂と油で固めた色からブラウン。こんな具合だ。

  • 1、 ブラウンに上がるときは所定の入り口から入りプレー後の足跡はブラシでならすべし。
  • 1、 ブラウンでパットする前にラインをブラシするのは2回までにすべし
  • 1、 ブラウンを痛めるのでスパイクシューズは絶対はいてはいけない。スニーカーのみの利用とする。

 ところ変わればゴルフは変わる。グリーンもブラウン。そういえば日本で砲台といえば盛り上がった砲台グリーンの代名詞だが、草創期の東京ゴルフ倶楽部駒沢では、ティーグラウンドを台場といった。港区台場には大砲がしつらえられていた。

 シリーズの舞台、東京よみうりCCのグリーンが50年ぶりに改造された。井上誠一設計で知られるが、オリジナルなグリーンは土が土台でそのうえにペンクロスという品種の洋芝がまかれていた。ベント芝の一種で、長い間、大会の舞台を支えてくれたが、同じ芝でも改良を重ね、より良い、グリーンのクオリティーをめざし、試合を盛り上げるものへと時代も変化する。今回のは「シャーク」という品種である。すでに世界の多くのコースに取り入れられている。梅渓(うめたに)支配人によると「芝の目先が細く、密集して芝立ちがよく、したがってカットに強い」そうだ。「開場から使ってきた従来のペンクロスは、芝の葉が広く伸びると寝てしまいベッタリと張りついてグリーンのスピードが落ちるのが悩みだった」とこれまでの苦労も明かした。「新グリーンだとカットにも強いからしっかり刈り込めばグリーンスピードも硬さ(コンパクション)も上がる。硬くて速いグリーンとなれば世界仕様、シリーズもますますスリリングになる。シリーズはこれからもっともっと面白くなりますよう」ということだ。

 冒頭にも紹介したように六甲のグリーンは砂を固めたサンドグリーン。同じ砂のグリーンでもドバイの砂漠のコースのようなのもある。だが、ゴルフはイギリス発祥のスポーツでリンクスというスコットランド特有の海岸で始まったゲーム。砂地に生えた芝草を羊が食(は)むとショートカットされボールがよく転がった。
 ゴルフゲーム発祥の謎を解くジョークのような話だが、羊がいたことでイギリスではゴルフがポピュラーな野外ゲームに発展したというのは本当だ。ブルドーザーや芝を刈るモアのなかった時代、羊は貢献した。1800年代アメリカにコース造成ラッシュが始まると、牛と馬しかいなかったアメリカはイギリスからゴルフ倶楽部と一緒に羊を輸入した記録が残っている

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