◆男子プロゴルフツアー メジャー第3戦 第146回全英オープン最終日(23日・英ロイヤルバークデールGC=7156ヤード、パー70)
【サウスポート(英国)23日=榎本友一】初日から首位のジョーダン・スピース(23)=米国=が1イーグル、4バーディー、5ボギーの69と伸ばし、通算12アンダーで大会初優勝を飾った。15年マスターズ、全米オープンに続くメジャー3冠を歴代2番目の若さで達成。8月10日開幕の全米プロ(クウェイルホローC)で史上最年少の生涯グランドスラムに挑む。
スピースが自作自演の“V字回復”で史上6人目の完全優勝を果たした。23歳11か月26日でのメジャー3冠はタイガー・ウッズ(24歳5か月19日)を超え、ジャック・ニクラウス(23歳6か月0日)に次ぐ2番目の若さ。「(去年の)メジャーで勝利を逃していたから本当にうれしい」と穏やかな笑みでクラレット・ジャグ(優勝トロフィー)を鉛色の空に掲げた。
前半はショットが乱れて3打のリードを失った。初日から首位を走りながら、最終Rの12番パー3で2度も小川に入れ「7」をたたくなどして5打差を逆転された16年マスターズの悪夢がよみがえった。だが大胆かつ冷静な判断が、流れを変えた。
クーチャーに並ばれて迎えた13番。第1打を右の丘の深いラフへ曲げた。打てる状況にはなく、アンプレアブルを選択。21分間も競技委員らとのやりとりを続け、はるか後方にある練習場の芝へドロップした。ライのいい場所から3アイアンでの3打目をグリーン手前へ運び、2メートル半のボギーパットを決めた。
世界最古のメジャーでも前代未聞の“練習場リカバリーショット”で、傷を最小限に止めた。キャディーのマイケル・グレラー氏から「1打を追う立場になったけど、これで流れは変わったぞ」と励まされ「逆に勢いになった」。続く14番でバーディーを奪うと、15番は16メートルのイーグルパットを沈め、ドヤ顔でカップを指さした。16番は7メートル半を決め「勝利を確信した」。
世界ランクは松山を抜き2位へ浮上。1週間で歴代3位の約23万5000人が詰めかけた大会の主役になった。8月の全米プロでは、ウッズ(24歳6か月23日)超えとなる史上最年少での生涯グランドスラムの快挙に挑む。「もちろん生涯グランドスラムが目標。でも今はこの勝利をゆっくり味わいたい」。パットの名手は静かに喜びをかみしめた。
◆生涯グランドスラム マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロの4大会を制すること。ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン(ともに米国)、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)、ニクラウス、ウッズ(ともに米国)の5人が達成。同一年度の4連勝はいない。
◆ジョーダン・スピース 1993年7月27日、米テキサス州ダラス生まれ。23歳。16歳で初出場した米ツアーで16位に入る。テキサス大在学中の2012年にプロ転向し、13年のジョン・ディアクラシックで初優勝。米ツアー通算10勝。15年はマスターズ、全米オープンとメジャー2連勝。185センチ、84キロ。家族は両親と弟、妹。