松山英樹はバックナインの重圧かリズムが少し早かった…細川和彦が分析


18番で寄せる松山英樹(ロイター)

 ◆米男子プロゴルフツアー 今季メジャー最終戦 第99回全米プロ選手権最終日(13日、米クウェイルホローC、7600ヤード=パー71)

 2000年の米ツアー、ケンパーインシュアランスオープン2位で、日本ツアー8勝の細川和彦(46)=茨城GC=が14日、全米プロでの松山の後半9ホールでの失速を招いた得意のアイアンショットのミスを、自身初の2戦連続の優勝争いによる疲労とメジャー初制覇への重圧が要因と分析した。一方で、メジャー14勝のタイガー・ウッズ(米国)級の「オールラウンダー」と安定感を高く評価。来年4月のマスターズ以降でのメジャー制覇に大きな期待を寄せた。

 非常に惜しかったですが、今大会の松山君はいつメジャーで勝ってもおかしくないプレーに見えました。最終日も何が悪いから負けたというのはない。今回は、運も味方につけたトーマスがその上を行ったという印象でした。

 今大会は2日目にメジャーで初めて首位に立ち、初めてに近いメジャーの最終日バックナインでの優勝争いでした。メジャー制覇への重圧か、残り9ホールは力が入っていた。松山君は気づいてなくてもプレーのリズムも少し速くなっていた。12番、13番、14番のアイアンショットでのミスは力が入って体の動きが止まり、フィニッシュが速かった。迷いもあって思い切り振り切れていなかった。得意のショートアイアンでのミスは、本人には相当悔しかったはずです。

 前週も世界選手権シリーズという大きな大会で、自身初めての2戦連続優勝を狙う疲れもかなりあったはず。タオルで汗を拭う回数が後半、目に見えて増えていた。それでも最後まで粘った。これまで21戦ものメジャーでもまれ、今の松山君は、ジャンボさん(尾崎将司)が昔よく言っていた「体・技・心」がそろってきたように見える。強い体に多彩な技、勝つための精神力も兼ね備えてきた。

 メジャー初優勝を飾ったトーマスは、小柄ながらスイングアークが大きくて飛距離も出る。優勝争いの中でも思い切り振り抜けていて安定していた。パットも上手で、今季2度優勝争いで敗れていた松山君は意識せざるを得なかったと思う。スピースも含めて、良きライバルとして今後の世界のゴルフ界を引っ張っていってもらいたい。

 今後、松山君は日本人男子初の世界ランク1位とプレーオフシリーズ制覇が目標になる。メジャー優勝がどうのじゃなく、今季トータルで見たら松山君が世界中で一番安定した選手。僕は、そっちの方がメジャー1勝よりも価値のあることのように思う。

 今の松山君はパワーもアプローチの技術もある。4大メジャー全てのセッティングに対応でき、芝も異なる世界中のゴルフ場で結果を残してきた。今まで日本にはいなかった、ウッズのようなオールラウンドプレーヤー。メジャーを勝つチャンスは来年も間違いなくある。優勝候補として注目や期待を浴びる中で勝つ。ホールアウト後のあの悔し涙が糧になり、きっと松山君はまた大きくなる。期待大です。(プロゴルファー)

 ◆細川 和彦(ほそかわ・かずひこ)1970年12月28日、茨城県生まれ。46歳。日体荏原高1年でゴルフを始める。日体大時代にキャディーを務めた尾崎直道に弟子入りし93年プロ合格。95年に初優勝し、05年まで11年連続賞金シード入り。99年には日本シリーズJTカップなど2勝で賞金ランク2位。ツアー通算8勝。177センチ、80キロ。

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