【武藤一彦 王者の系譜】優勝して賞金王となったことに意義があり、意味がある


優勝し逆転で賞金王に輝いた宮里優作は青空の下でガッツポーズ

優勝し逆転で賞金王に輝いた宮里優作は青空の下でガッツポーズ

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー 今季メジャー最終戦・日本シリーズJTカップ最終日(3日、東京・東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 2013年にプロ初優勝した日本シリーズJTカップで、宮里が2度目の王座に輝いた。これがあの時のチャンピオンなのか。快挙に接しても、同じ人間がやってのけたとは、しばらく信じられなかった。13年は18番でチップインパーを決めたが、腰を抜かしてグリーンに倒れ込んだ。

 それがどうだ。この日はアウト29で独走した。プロ15年目、37歳。逆転賞金王。この4年間の成長だ―というのは簡単だが、今季が始まるまで、わずか3勝。勝ち味の遅い、ベテランに差し掛かった選手のやったことは奇跡と言うしかない。

 兄・聖志、妹・藍の3きょうだいは沖縄に生まれた。父・優は沖縄が拠点のティーチングプロ。ゴルフ好きの3人を「勉強第一、ゴルフは2番」と教えた。「聖志のパワー、優作の素質。しかし、妹のパッティングのセンスは2人をしのいで私は一番、買っている」と言っていた。兄弟はトップアマからプロへ、藍は中学生で素質が開花し、04年の日本アマでベスト4に残った。

 優作は東北福祉大から02年にプロ入り。その前年、アマで日本ツアーに参戦すると、三井住友VISA太平洋マスターズ3位など何度も上位に入った。その順位を賞金換算すると賞金ランクの22位に相当した。だがその後は、シードは取るものの優勝は13年まで待たねばならなかった。

 優勝して賞金王となったことに意義があり、意味がある。表彰式では「この優勝は4年前より成長していることの確認になった。藍の引退で宮里家のニュースが減ったといわれないように聖志、優作にもまだまだ伸びしろがある。見ていてください、頑張りますから」。と宣言した。「僕の時代はこれからだ」とも。青木功が初の賞金王になったのは34歳だった1976年、尾崎直道は35歳の91年だった。優作の未来が、楽しみだ。

(ゴルフジャーナリスト)

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