驚異のエージシューター田中菊雄の世界72田中語録の4 武藤一彦のコラム


☆遠くのボールは手があがる。近くのボールは顔上がる。冬のゴルフはボールを遠くに置きしっかり手を伸ばして叩くといい。低い弾道でランも出るしロングヒッターになった気がする。

 

 冬のゴルフはスコアメイクが難しい。芝が枯れて薄い分、球が沈みトップしやすい。寒さで筋肉が固まるので体が回りにくい上、北風が強く吹くからつい力が入りミスが出る。

 

 ゴルフは自然との闘い。ありのままを受け入れ少々,ライが悪いからと言ってゴルファーが文句を言うのはご法度だが、冬場の悪コンデションは著しくスコアを崩すなど辛いものだ。仲間うちのラウンドでは6インチプレースで球を良いライに動かすなどするのも最近では当たり前になった。アメリカなどでは、冬場のゴルフは、やはり6インチ動かす、ウインタールールがある。ただし、その際、ボールを手で動かさず、クラブヘッドでちょいちょいとい移動させる。もともと、グリーン上の球以外、インプレーの球を拾い上げるのはルール上、認められない行為、季節限定の特別ルールとは言え、しゃがみこんで動かすのははばかられる。そこでクラブの先でちょいちょいとやるのがマナーというものだ。
 余談ながら、6インチは約14センチ、スコアカードの縦の長さと決まっている。そのためスコアカードはのどこの国でも今のスタイル、大きさもどこの国でもサイズなのだ、と聞いたことがある。

 

 わが田中ゴルフは冬でも「ノータッチ」「オーケー、パットなし」-エージシュートという競技だから、厳格なまでにスコアにこだわる。語録はそんな厳しさの中から生まれた。
 「遠くのボールは手が上がる、近くのボールは顔上がる」は、田中ゴルフの基本、すでにこのコラムでも何度も伝えたが、球の位置は遠くに置こうという名人の実践から出たレッスンだ。アドレスで球を遠くに置くとスイングがしっかりできやすい。中でも遠くに置くとバックスイングでも手が大きくあがりやすい。手が上がるとインパクトで手が伸び顔が自然と残る。左サイドに壁ができ、ヘッドも走る。近いと手打ちになり、合わせようとする気持ちがヘッドのスピードを殺すぞ、と戒める。

 

 「スイングはアドレスの再現、左手をしっかり伸ばし、しっかり上げしっかりインパクト が鉄則。ところが、大事なショットを前に、ミスしてはいけないと緊張したり、恐怖心があると人間だれしも球を遠くに置けない。球が近いとアドレスで体は近いことを感じるからインパクトで体を遠ざけようとする心理も手伝ってのけぞるようなインパクト になる。ヘッドアップするのはこれが原因です」

 

 冬のゴルフ。体は動きにくいし球は沈んで打ちづらい。それなら球から離れ広めのスタンス、空振りを恐れずしっかり打つ。トップしたら?それでも球は良く転がるから距離は出る。球を遠くに置くと届かないと思うが、感覚をつかむとナイスショットにおどろくはず。振り切るスイングを覚えてしまうと期間限定ではなく、年中使える「オールシーズン・スイング」となることうけあいだ。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。