驚異のエージシューター田中菊雄の世界78 武藤一彦のコラムー驚異のエージシューター田中さんは83歳になり、さらなる挑戦に歩み始めた


 エージシューター田中さんは3月3日、83歳の誕生日を迎えた。71歳で初めて達成したエージシュートはいま、通算で274回を数えている。77歳までは9回だったが、78歳の時に初めて2けた、80歳になった2015年には50回の大台へ。
 さらに81歳のとき77回、82歳の2017・2018年シーズンには89回と“年間最多記録”を更新した。78歳の時からは5年連続、毎年自己記録を更新中だ。

 

 エージシュートは年齢との追いかけっこ。年々、落ちる体力、飛距離、気力の衰えなどアンチエイジングがテーマとなるが、そうした課題をこともなげに克服、ゴルフの質の低下を抑え、スコアを維持する田中さんである。その技術は衰えるどころか年々、上がっている。先のことはわからないが、年齢に比してゴルフのレベルを上げているから健康でいれば記録は伸び続ける、というのが周囲の評価である。そんな田中さんの82歳の1年をふり返っておこう。

 

 82歳の第1号はホームコースの一つ、千葉・木更津GCだった。誕生日当日の3月3日の誕生日を祝う会。田中さんはアウトを41、インを41の82、期待通りエージシュートをやってのけ好スタートを切った。

 

 冬のゴルフは難物だ。寒さに加え、ライの悪さ、加えて朝はグリーンが凍り、昼には溶け、グリーンの状態は年間でもっともむずかしい。そんな中、いやな顔を見せず、目的を達するあたりさすがだった。というのもこの後、20日間、ラウンドに挑戦するのだが、記録はぴたりと止まった。寒気と強風は大敵。さすがの田中さんもお手上げ。ようやく2号が出たのはホームコースの東京よみうりCC、42,39の81だった。

 

 4月、桜の季節。調子があがった。田中さんのエージシュートは木更津、東京よみうり、そしてよみうりGCと3つのホームコースに集中するが、4月、よみうりGCを75,76と2日連続“70台”で回って見せた。パー72だから7アンダーと6アンダーパーである。すごい!
 「もう芝の一本まで知ってますから、自分のゴルフができればスコアはそこそこ出せる自信はあります」といいながら、6400ヤード強のレギュラーティーをアンダーで回って絶好調だった。

 

 本当に調子が良かったのはその1か月後だ。東京よみうりCCの恒例の会を若いメンバーと同じバックティー、6800ヤードから回ると81のベストグロスでまわり優勝しあっと言わせている。さらに同コースでは夏恒例の「盛夏杯」でも81、秋のクラブ対抗出場者を決める研修会を82、いずれもバックティーから回りベスグロ、腕自慢の若いもんをぎゃふんといわせている。

 

 エージシュートを目標にしてから白ティー、約6200ヤードを自己の競技ティーと決めている。しかし、メンバーシップコースの競技参加もあきらめてはいない。自己の上達と研鑽を忘れないためにも時に応じて若いパワーに同じ条件でぶつかっていく。
 秋の研修会はクラブ対抗競技の代表を決める年間通しての恒例行事。田中さんは72歳の時、初めて研修会に出場、クラブ史上最高年齢で代表入りしている。
 10年後の今年の研修会では上位を占め2度目の代表の座もゆめではない。「代表になれたら最高齢の記録となる。名誉なこと、めったにないことなので頑張っている。気持ちが入っている、たのしい」
 エージシュートとクラブ対抗の代表選手。高い目標がゴルフを、そして82歳の健康を支えた。4月、83歳の田中さんに金メダルが約束されようとしている。期待したい。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。