驚異のエージシューター田中菊雄の世界101 武藤一彦のコラムーノーベル賞


 「いまやりたいことはエージシュートです」-2018年のノーベル生理学・医学賞に輝いた日本の本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、10月1日、日本中が注目する記者会見できっぱりと言ったのには驚かされた。免疫を抑える働きを持つ分子を発見、新たながん治療の礎を築いた人の思わぬ回答に会見場は一瞬、シーンと静まり返るのがテレビを通しても分かった。
 少しの間があいたあとエージシュートが、年令以下のスコアで回るゴルフのこととわかると会場の雰囲気は和やかに一変した。堅苦しいムードがやわらぐと教授の顔からゴルファーとなった本庶さん「私は76歳なのでワンラウンドを年齢と同じ76で回りたいと思っております」と笑顔。さらに「年令を重ねるごとに落ちる体力と闘いながら自分の年令と同じかそれ以下のスコアを出すことはゴルファーの夢。これから先、目標をもって取り組んでいこうと思っております」と身を乗り出すのだった。本当にゴルフが好き。生きがいなのだ。その姿は新鮮で親近感を覚えた人も多かったことだろう。

 

 京都生まれ、京都大で医学博士取得。その後、米留学、東大などの教授を経て12年にドイツの医学賞、13年には文化勲章などを受章した。今回の受賞理由は「免役抑制によるがん療法の発見」。がん療法につながる免疫を発見し、がん治療薬の開発、実用化に道をつけたことによる。

 

 充実したゴルフライフを送っていた。京都大時代、恩師の元でゴルフを覚え師の名を冠した会で何回も優勝する腕前。週末は必ずラウンド、自宅ではパットの練習マットで毎日練習。競技志向のアスリートゴルフは長い研究生活を支える潤滑油だった。
 京都大といえば12年に同じノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授(56)は20歳下、ゴルフ仲間だ。山中教授は今回の受賞を「跳びあがるほどうれしかった」と喜んだが、その山中さんはスポーツマンでしられ今年2月の「別府毎日マラソン」で3時間25分20秒の自己最高記録をマークしたアスリート。だが、ゴルフでは本庶さんに一歩も二歩も譲るというから相当な腕前、高レベルだ。

 

 さて、わがエージシュート300回を越えた名人、田中さんの反応である。「エージシュートのお仲間がまた一人増えましたね」とこんな応援歌だ。
 「76歳で76を目指す。察するところゴルフも研究生活同様、妥協せず正面から本気で取り組んでいられる。共感が持てますね。みなさん80歳になるとエージシュートでもめざすか、と言いますが、それでは遅すぎる。鉄は熱いうちに打てというが、エージシュートも熱いうちです。そう、70歳台で意識するのがいいですね。この年齢なら70台のスコアが距離の長短にかかわらずまだ出る。今のうちに力をつけておくと70歳代後半。そして80歳代に入っても、私の経験ではスコアは維持できます。私は83歳の今、3ラウンドに1回エージシュートが出ていますが、本庶さんにも期待できそう。エージシュートはゴルフのノーベル賞に相当するはず。充実感はノーベル賞と同じか、それ以上か、達成されたときの心境をぜひ教えていただきたい」と期待した。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。