木下裕太、11年目初Vで男泣き 最後のパットは「手が震えた」


初優勝した木下裕太は、グリーンにしゃがみ込んで歓喜(カメラ・馬場 秀則)

初優勝した木下裕太は、グリーンにしゃがみ込んで歓喜(カメラ・馬場 秀則)

 ◆男子プロゴルフツアー マイナビABC選手権最終日(28日、兵庫・ABCGC)

 木下裕太(32)=フリー=が5バーディー、2ボギーの69で回り、通算15アンダーで並んだ川村昌弘(25)=アンテナ=とプレーオフに突入。1ホール目でイーグルを決め、プロ11年目で今季12人目の初優勝者となった。こわ面の風貌ながら「めちゃくちゃ気が弱い」個性派は、日本シリーズJTカップ(報知新聞社主催・11月29日開幕)の出場権を初めて手にした。

 気弱な“ヤンキー系プロ”が、ド派手に初優勝を決めて泣いた。18番パー5で行われたプレーオフ1ホール目だ。木下裕は残り205ヤードから4アイアンでピン左奥4メートルに2オン。川村の6メートルのイーグルパットが外れた後、ウィニングパットは緊張の極致にあった。「手が震えたけど、動いた」。ド真ん中から沈め初優勝。その場にしゃがみ込んで男泣きした。プロ11年目。その大半が下部ツアー暮らしで、レギュラーツアー通算36戦目での栄冠に「長かった。ゴルフをやめようと思った時もあった」

 初の最終日最終組。1番のバーディートライは30センチショートし「お先に」とタップインしようとしたが、ボールはカップの縁を1周回って縁に止まった。「私の心臓も止まりそうになりました」と父・淳さん(62)は苦笑い。だがその2秒後、ボールがカップへ落ちた。ゴルフ規則では、ボールが停止しているか確認するため10秒間待てる。「ボールが揺れていたので『頼む』と願った」。紙一重のパーセーブだ。

 茶髪で細まゆ毛。目つきも鋭いが「めちゃくちゃ気が弱いんです。見た目だけでも偽らないとゴルフをやっていられないので」と恐縮する。昨年の最終予選会30位の資格で出場した今季は、飛距離とフェアウェーキープ率をポイント化した「トータルドライビング」で3位。課題のパットも向上してブレークした。15番から川村と伸ばし合った劇的な19ホールを乗り越えても、なお「現実感がない。また、やれと言われてもできる気がしません」。自らの「弱さ」を認められるからこそ、強いのだ。(竹内 達朗)

 ◆木下 裕太(きのした・ゆうた)1986年5月10日、千葉市生まれ。32歳。8歳からゴルフを始める。日大に進学も3年時の07年に中退しプロ転向。レギュラーツアーは08年長嶋茂雄招待セガサミーカップで初出場。09年下部ツアーのトーシンチャレンジで1勝。先月末のトップ杯東海クラシック6位が最高成績だった。家族は両親と兄、姉。172センチ、72キロ。

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