◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー今季最終戦 日本シリーズJTカップ最終日(2日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)
小平智(29)=Admiral=が通算8アンダーで並んだ石川遼(27)=カシオ=、韓国の黄重坤(26)=フリー=と大会史上初の3人によるプレーオフを1ホール目で制し、年少4番目のメジャー3冠に輝いた。6年連続の通算7勝目。4打差11位から1イーグル、4バーディーでベストスコア64をマークし、83年の青木功、14、16年の松山英樹以来となる同一年度日米ツアーV。妻で08年賞金女王の古閑美保さん(36)は涙に暮れた。 迷いはなかった。小平は、カップ1個分切れるスライスラインを読み切った。左手前1メートル半のウィニングパットを沈めると右の拳を握り、グリーンサイドで見守った美保夫人に笑顔で手を振った。「米国で優勝してからすごく苦しかった。日本のメジャー最終戦で優勝できて最高の気分」。喜びも苦しみも味わった1年を、メジャー3冠で締めた。
4打差を追って出た最終日。自宅を出る時に宣言した。「今日は60か80のゴルフをする」。優勝だけを見据え、攻め抜くことを決めていた。4番で花道からのチップインバーディーで「流れに乗れた」。6番パー5は215ヤードから5アイアンで2メートルに2オンしイーグル。17番パー5は8メートルから2パットでバーディーを奪い、首位をとらえた。
16年大会は前半で独走態勢を築きながら後半失速し、18番のボギーで1打差に敗れた。昨年は賞金ランク1位で迎えながら、優勝した宮里優作に賞金王を奪われた。一緒にトロフィーを掲げた美保夫人が泣いたのは初めて。抱きついてきた妻の涙顔に「ビックリした」と照れる小平のそばで、姉さん女房は「ここは悔しい思いをしている場所だから。こみ上げてしまった」と顔を覆った。
4月のRBCヘリテージで日本人5人目の米ツアー優勝を果たし、拠点を米国に移した。世界最高峰のツアーを転戦するうちに「自分が劣っている」という思いを抱くようになった。飛距離を出したい。高い球を打ってグリーンに止めたい。試合のたびにスイングを変え試行錯誤するうちに、自分を見失った。3戦連続予選落ちは2回。週末もコースに残り5時間打ち込みながら打開策を探った。10月だった。普段はゴルフを語ることが少ない大溝雅教キャディーの言葉が響いた。「もっとテキトーにゴルフしろよ」。吹っ切れた。
子供の頃、たくさんのスポーツの中からゴルフを選んだ理由は「難しかったから」だった。「できないことをベースでやっているから、できた時がうれしい」。描いた通りの一打が出た時の、両手に残る感触を追い求めながらここまで来た。「僕にとってのゴルフは、めちゃくちゃ難しい大好きな遊び」。結果が出ない日々はつらかったが、ゴルフを嫌いになることは一度もなかった。
年明けすぐに米ツアーでの戦いが始まる。昨季優勝者で争うセントリー・チャンピオンズ(1月3~6日、ハワイ州カパルアリゾート)が初戦。「オフはない方がいい。この優勝をきっかけにして米ツアーで2勝、3勝としていきたい」。最終戦で得た自信を、来年の飛躍につなげる。(高木 恵)