驚異のエージシューター田中菊雄の世界112 武藤一彦のコラムー関東グランドシニア選手権突破


 平成から令和へと元号が移る直前の桜咲く4月、われらがヒーロー、田中名人はまたも快挙を達成した。アマゴルフ界シーズン幕あけの4月15日、「関東グランドシニア選手権」の予選を突破、5月末の大会の出場権を手にした。84歳は関東ゴルフ連盟の予選会に出場、136人中、堂々の25位。それもエージシュートに3アンダーの81ストロークだった。同予選突破は、2018年、81歳時に81のエージシュートで突破以来2度目、さらには公式戦に84歳が自力で予選突破した初の偉業であった。

 

 神奈川・本厚木CC、6076ヤード、パー72。参加136人が18ホールストロークプレーで争った。田中さんはインの最終組からスタート、39と好スタート。後半のアウトは3パットのダブルボギーもあったが、バーディーもあり42、トータル81。予選通過ラインの41人以内を堂々とクリアする余裕のスコアでホールアウトは見事だった。
 「後半は70台を狙って攻めた。エージシュートはもちろん、スコアにもこだわった。伝統の公式競技だしチャンスがある以上、攻めてみようと気持ちが乗った」。70歳以上のグランドシニア限定の大会、「関東グランドシニア選手権」には他の2地区の代表と合わせて144人が出場、5月30,31日、栃木・東松苑CCで行われる。伝統の大会で、どんな戦いぶりとなるか今から楽しみだ。

 

 予選には70歳以上のこだわりのゴルファーが集まった。この日の予選通過者にはクラブチャンピオンの日本一決定戦「報知アマ」の常連、石井重次、原継雄、河本徳三朗、松尾俊介さんらのほか、元プロ野球出身の平松政次さんらが名を連ねた。報知アマには一昨年、原辰徳・現巨人軍監督が充電期間に出場したことは付記しておこう。ゴルフにかける思いはシニアになるほどゴルファーを熱くする。
 再生となった原巨人は今季好調、リーグ戦を引っ張るが名門・戸塚CCのクラブチャンピオン、原監督の充電期間中のエネルギーはゴルフパワーが源泉と勝手に想像するしだい。ゴルフへのこだわりは野球にも効く、といわせていただく。

 

 これまでにクラブ競技で活躍する田中さんはアルバトロス1回、ホールインワン2回をはじめ様々な分野での活躍を伝えてきたが、やはり競技者としての血がさわぐのだろう。ここのところ全国規模の大会となると特別な思いがあるのか、好成績が引きも切らない。
 エージシュートは、そのキャリアに勢いと花を添えて本当にすごい勢いだ。
 すなわち、東京よみうりCCのグランドシニアチャンピオンになったのが70歳と72歳。72歳の時には同CCのクラブ対抗の代表入りも最年長でやってのけている。だが、そんなことで驚いていられなかったのが昨年。83歳の田中さんは実に10年ぶりに再びクラブ対抗チーム入りしたことは既述の通り。そして今回の本大会出場である。
 これでお分かりの通り、すべて好結果、成功への道はエージシュートにつながっている。田中さんのチャレンジはエージシュートへのこだわりから生まれ、挑戦へと膨らみいまや生きがいへと昇華したのである。

 

 「今や自分の年令はないものになっている感じ。あえていえば60歳くらいの感覚といっていいかもしれないが、そんな不思議な感覚でおります。元気で毎日ゴルフが出来ていることの幸せを楽しんでいられる。感謝しています」―名人は今の心境を、静かに、ささやくように教えてくれた。
  さて、エージシュートは15日現在。通算420回に到達した。達成コースは56コースとなった。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。84歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。