ローリー、宗教対立吹き飛ばす全英V 北アイルランドがアイルランド人を祝福


 ◆男子プロゴルフツアー メジャー最終戦 第148回全英オープン最終日(21日、英ロイヤルポートラッシュGC)

 【ポートラッシュ(英国)21日=岩原正幸】シェーン・ローリー(32)が4バーディー、5ボギーの72で回り、2位に6打差をつける通算15アンダーでメジャー初制覇。68年ぶりの開催となった英国領・北アイルランドでアイルランド人が優勝した。約20年前まで宗教対立が激化し同地域の情勢は混迷を極めていたが、会場ではアイルランド国旗が振られるなど友好ムード。歴史的な大会を岩原正幸記者が「見た」。

 英国の人気選手・フリートウッドとの最終組でも、ローリーがバーディーを取るたびに観客からは緑、白、橙と3色のアイルランド国旗が振られた。グリーンそばに運んだ18番の第2打後には、サッカーのような応援歌が後押しした。優勝会見で「北アイルランド開催でアイルランド人が優勝。スポーツ以外でも象徴的ではないか?」と問われ「この島で全英が行われたこと自体が素晴らしい。地元のファンと祝うことができて、とてもうれしい」と声を弾ませた。

 アイルランド島は北東部の北アイルランドだけが英国領で、地域内で少数派のカトリックと多数派のプロテスタントが衝突し3000人以上が犠牲になった。ベルファスト合意が締結された翌1999年、北アイルランド自治政府が発足して恒久的平和へ歩み出した。ただ、今でも北大西洋に面したポートラッシュから南へ約100キロ、最大の都市ベルファスト西部には政治的意味合いを持った壁画が見られるなど、対立の痕も残っている。

 1951年以来68年ぶりに英本土以外で開催された全英で、パトレイグ・ハリントン(2007、08年)以来11年ぶりにアイルランド人が優勝。北アイルランドのファンは2日前、地元の英雄ロリー・マキロイの予選落ちに肩を落としたが、同じ島内出身のローリーの優勝で世界中に友好ムードを発信した。ひげと親しみやすい笑顔の大男は「これからホーム(家)に帰るけど、すでにホーム(地元)にいる」と感慨に浸った。

 ◆シェーン・ローリー 1987年4月2日、アイルランド・クララ生まれ。32歳。13歳でゴルフを始める。2009年アイルランド・オープンで欧州ツアー史上3人目のアマチュアで優勝し、プロ転向。同ツアーを主戦場として15年の世界選手権シリーズ、ブリヂストン招待など通算5勝。父はアイルランドで人気の「ゲーリック・フットボール」の人気選手。185センチ、100キロ。

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