渋野日向子、8差大逆転V…まるでウッズ「8打差ってちっぽけな感じですね」


16番でチップインバーディーを決めガッツポーズする渋野と大喜びするギャラリー(カメラ・豊田 秀一)

16番でチップインバーディーを決めガッツポーズする渋野と大喜びするギャラリー(カメラ・豊田 秀一)

 ◆女子プロゴルフツアー デサント東海クラシック最終日(22日、愛知・新南愛知CC美浜C)

 首位と8打差20位から出た渋野日向子(20)=RSK山陽放送=が8バーディー、ボギーなしの64で回り、通算13アンダーでツアー史上2番目の大逆転優勝を果たした。今季ツアー3勝目、海外メジャーのAIG全英女子オープン(8月)と合わせ4勝目。生涯&今季の獲得賞金は約1億643万円となり、大台を突破した。全英制覇後「ショートパットで手が震える」という弱い部分さえ認める強さを持つ渋野が大逆転で賞金女王を狙う。申ジエ(韓国)、浜田茉優(伊藤園)ら5人が2打差2位。

 V圏外からスタートした渋野がバーディーを奪うたびにゴルフ場の“空気”は変わっていった。首位に並んで迎えた16番パー3。難しい逆目のラフからチップインバーディー。申ジエを抜き単独首位に立った瞬間、コース中に大歓声が響いた。

 ツアー自己ベストを2打も更新する64。まさに“シンデレラ・チャージ”。トップでホールアウトした約1時間40分後、大逆転優勝が決まった。「びっくり。まさか8打差を逆転できるとは思っていなかった」と満面の笑み。ただ、その後、最終日最大逆転のツアー記録が11打差と聞くと「それに比べると、8打差ってちっぽけな感じですね」と“しぶこ節”で笑わせた。

 ガンガンとスコアを伸ばした渋野とは対照的に他の選手は伸び悩んだ。観客がスーパースターを後押しする一方、別のホールでプレーする選手は不意に起こる大歓声にリズムを崩した。全盛期のタイガー・ウッズやジャンボ尾崎らと同様“スーパースター現象”を起こす存在。「優勝できないと思っていた」と2位に終わった台湾のテレサ・ルーは白旗を掲げた。この日は天も味方。渋野のホールアウト直後に風雨が強まり、結局、2位とは2打差がついた。

 昨年までツアー獲得賞金は0円。今季、全英女子オープンの優勝賞金約7200万円とは別に、今大会の優勝賞金1440万円を加え、ツアーの生涯&今季の獲得賞金は1億643万4570円となり、大台を突破した。本格参戦1年目での1億円到達は04年の宮里藍以来。「この1年、予想していないことばかりが起きています。びっくりです」と素直な心境を明かした。

 世界を制して一躍、時の人に。注目度が急上昇し、プレーに影響が出ていた。「(8月の)軽井沢72から短いパットで手が震えることが増えた。きょうも17、18番で震えた」と正直に明かす。パット・イズ・マネー。ショートパットが明暗を分けるプロゴルフの世界において弱点を明かさない選手が多い中、渋野は自分の弱さすら認める強さを持つ。

 賞金ランクは2位で首位の申ジエとの差は1008万6762円。1試合で逆転可能な僅差になった。「1億円という目標を達成できた。次の目標は…皆さんも、そう思っているかもしれませんが、賞金女王です」。渋野が堂々と戴冠を宣言した。(竹内 達朗)

 ◆最終日の大逆転優勝 日本女子ツアーは02年広済堂レディスで藤野オリエが11打差17位から出て66。首位から出て77と崩れた木村敏美をプレーオフで下した。男子ツアーは9打差が最大。13年日本プロの金亨成(韓国)は、17位から出て65で5アンダーとして松山英樹を逆転。80年日本国土計画サマーズの船渡川育宏、83年ゴールドウィンカップ日米ゴルフの中嶋常幸が9打差を逆転した例もある。

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