米女子ゴルフツアーを主戦場とする世界ランク4位の畑岡奈紗(21)=フリー=が29日、スカイプを通じスポーツ報知の取材に応じ、金メダル獲得を目標に掲げる東京五輪について「中止じゃなくて良かった」と心境を口にした。ツアーは7月以降に再開予定で、現在は茨城県内の自宅で調整する。宮里藍さん以来の世界ランク1位の目標や、AIG全英女子オープンを制した渋野日向子(21)ら同学年への思いも語った。(取材・構成=榎本友一、岩原正幸、宮下京香)
畑岡は今年、1月に2戦連続2位と好成績で滑り出した。だが、2月からの試合が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止、延期に。3月上旬に米本土での試合を前に渡米したが、帰国し、試合がない現在は茨城の自宅で調整を続ける。
「バーベル、ダンベルなどトレーニングは自宅でやることが多いです。ゴルフの方は時々練習に行きます。外出を控えているので、通常よりはできていないです」
2016年10月のプロ転向から金メダル獲得を目標に掲げる東京五輪が1年延期になった。
「下手したら中止もあり得るのかなと考えていたので、まずは中止じゃなく延期で良かった。プロ転向の時は代表に入れるような位置でもなかったけど、いざ東京五輪が近づいて、自分が出られるような位置にいる。そのチャンスをしっかりつかめるように頑張りたいです」
昨年はメジャーで5戦中3戦で予選落ちと悔しさを味わったが、秋に国内メジャー連勝と実力を示した。
「去年は(3月に)優勝はできたけど、2勝した18年と比べると悔しい1年でした。(ただ)9、10月に日本で勝てたのはすごく大きかった」
同じ1998年度生まれ「黄金世代」の渋野が全英で優勝した。改めて同学年選手の活躍は、どう見ているのか。
「最初は、やっぱり自分も出ていたので悔しい気持ちの方が大きかった。でも、後になって、同世代の子がいきなり海外に行って勝ったということで、自分もできるんじゃないかな、という気持ちにさせてくれた。(同世代の日本での活躍は)ネットでチェックして、毎週のように上位に絡んでいたので、私も負けられないと思いました」
現在の世界ランクは堂々の4位。10年に日本人初の1位となった米9勝の宮里藍さん(17年引退)の背中を追う。
「ここまで来ると、本当に大事なパットを決められるか、決められないかの(少しの)差。もっとショートゲームを磨いて、やっぱり世界ランク1位になってみたい。目標の一つでもあるので頑張りたいです」
12月には延期されたメジャー・全米女子オープンがある。
「今年やってみたいことをいろいろと試して、うまくハマれば来年の五輪にも、ピークの持っていき方は自信になると思います。今年は日程が変更される前は(1試合を除き)メジャーの前に1週休んで調整しようと思っていた。ただ、これだけ試合が減ってしまったので、できれば積極的に全部出るくらいの気持ちではいます」
最後は、再開を待っているファンに笑顔でメッセージを送った。
「再開した時にはいいプレーを見せて、たくさん勝てるように頑張りたい。今は我慢の時期ですけど、まずは皆さん、健康第一で過ごしてほしいと思います」
◆21年東京五輪への道 国際ゴルフ連盟は29日、代表選考方法を発表した。男子は21年6月21日時点、女子は同28日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権を得る。〈1〉15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含み最大2人が出られる。21年東京五輪の日程は未発表だが、20年時と同じであれば女子は8月に4日間、埼玉・霞ケ関CC東Cで72ホールストロークプレーの個人戦で競う。16年リオ五輪で初出場した日本勢は女子は野村敏京が4位、大山志保が42位だった。
◆日本女子の世界ランク上位5人◆
〈4〉畑岡 奈紗(21)
〈12〉渋野日向子(21)
〈14〉鈴木 愛(25)
〈59〉稲見 萌寧(20)
〈62〉河本 結(21)
【注】3月16日付で凍結中の順位。鈴木までの3人が東京五輪代表圏内。( )内は年齢
◆ゴルフの世界ランク 女子は2006年2月から制度化。米ツアーでシーズン5勝を挙げた宮里藍が、10年6月に日本勢唯一の世界ランク1位となっている。同1位は歴代でもまだ計14人しかいない。1977年全米女子プロを制した樋口久子、87年の米ツアー賞金女王・岡本綾子は対象外だった。男子では、松山英樹が17年6月に日本男子最高の世界ランク2位となっている。
◆畑岡の2019年優勝大会
▼起亜クラシック(3月、米)
▼日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(9月)
▼日本女子オープン(10月)
◆6月全米女子プロ選手権10月まで延期
米女子プロゴルフ協会(LPGA)は29日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、6月に開催予定だったメジャーの全米女子プロ選手権を10月8~11日に延期することを発表した。また、18年に畑岡奈紗が日本勢最年少で米ツアー初優勝を飾った6月のアーカンソー選手権なども延期が決まり、ツアーの再開は7月中旬まで延びた。
◆「ワンワン」ダフルなオフ生活…取材後記
畑岡の取材は3月の成田空港での渡米時以来。その時は、まだ対面での取材だったが、米国での新型コロナウイルスの不安を語っていた。今回は茨城の自宅からスカイプをつないでもらい、パソコンの画面越しではあるが、試合中と違い、リラックスした柔らかい表情が印象的だった。
理由は2匹のトイプードルとの生活だそうだ。星を意味する「ステラ」は「何か(ゴルフが)良くなるきっかけがほしい」と、17年夏に飼い始めた。昨年、子犬が生まれると自身の名前の由来である米航空宇宙局(NASA)にちなみ「アポロ」と名付けた。「すごく癒やされています」と、表情を緩ませる。米国でのツアー転戦中も実家から愛犬の動画を送ってもらい癒やされた。
インタビューではフロリダの新居について「やっと(近くに)落ち着いて練習できるコースが見つけられた」と語り、最高の練習環境で世界一を目指す。(ゴルフ担当・岩原 正幸)
◆畑岡 奈紗(はたおか・なさ)1999年1月13日、茨城・笠間市生まれ。21歳。11歳でゴルフを始め、2014年日本ジュニア2位。15、16年世界ジュニア優勝。16年全米女子アマ8強。16年秋に日本女子オープンで17歳で史上最年少優勝し、プロ転向。17年大会で連覇など日本通算6勝。18年アーカンソー選手権など米ツアー通算3勝。名前は米航空宇宙局(NASA)に由来。家族は両親と妹。158センチ。