渋野日向子、全英で勝っても有名になっても天真らんまんなスマイルシンデレラ…担当記者は見ていた


振り用の棒を持ち、イチローのモノマネをする渋野日向子

振り用の棒を持ち、イチローのモノマネをする渋野日向子

 昨年の女子プロゴルフ、国内メジャーのワールドレディスサロンパスカップ(19年5月9~12日、茨城GC東C、報知新聞社後援)で、当時20歳178日の渋野日向子(21)=サントリー=が大会最年少でツアー初優勝を飾った。飛躍のきっかけとなった大会は今年、新型コロナウイルスの影響で中止となったが、スポーツ報知では初Vからちょうど1年の12日、“しぶこフィーバー”に沸いたこの1年の軌跡を振り返る。

 渋野日向子の存在が世に知れ渡った。ワールドレディスサロンパスカップを大会史上最年少20歳178日で制し、ツアー初優勝。印象深かったのは優勝会見だ。「私で良かったんでしょうか?」。今になって考えると“しぶこ節”全開。会場は笑いに包まれた。

 私にとっても“大舞台”だった。ゴルフ担当になって7か月。先輩記者から「そろそろメジャー優勝の原稿を書いてもらうから」と指名され、張り切って臨んだ大会だった。ソフトボール経験者の私は「特技=ソフトボール」で、「速球派右腕」の肩書を持つ、ひとりの選手が気になった。

 それが渋野だった。開幕前日の昼過ぎ、初のメジャー大会に挑む20歳を取材した。「メジャーを前にどんな気持ちですか?」と聞くと、「この時間ちょっと眠いんです。おなかもいっぱいで…」。えっ? 私は戸惑った。すると渋野は「アハハハ」と笑い、「緊張はあまりない。焦らず自分のプレーをしたい」と意気込みを語ってくれた。

 同じ日の夕、カメラマンが「ソフトっぽい写真を撮りたいんですが…」と、練習後の渋野にダメ元でお願いした。むちゃぶりだったが、どこからか練習用のバットを持ってきて打者の構え、そして「イチローのマネ」で笑わせてくれた。18年末に取材したことはあったが、初めてしっかりした取材を終え「飾らない人」という印象を持った。

 第2ラウンド(R)序盤のギャラリーは、お父さんと男性ファン2人の3人だけだったが、首位タイで出た最終Rは、初めて大歓声を背負ってのプレーとなった。それでも「笑っていれば何とかなる」。まさに笑う門には福来たる―。見事プロ初Vをつかみ取った。

 この1勝を機にシンデレラストーリーを一気に駆け上がった。8月に、AIG全英女子オープンで77年全米女子プロの樋口久子以来、日本勢2人目の海外メジャー制覇。“しぶこブーム”を巻き起こし結局、日米5勝を挙げた。昨季終了後、オフにやりたいことを聞かれると「ポケモン(のゲーム)を全クリしたい」と無邪気に声を弾ませた。攻めのゴルフとまぶしいスマイル。有名になっても変わらない天真らんまんさで、これからもファンを魅了してくれるだろう。(宮下 京香)

最新のカテゴリー記事