驚異のエージシューター田中菊雄の世界127 武藤一彦のコラム


 田中さんのフランチャイズは千葉の木更津に移った。コロナ禍で東京のコースは営業を自粛してクローズ。さればと千葉のホームコース、木更津GCへ通う回数が増えている。田中さんは故郷の島根GCと合わせ4コースのメンバーだ。
 川崎の自宅を早朝に出て首都高速、アクアラインを経由すれば1時間余。そこはエージシュートをこれまでに70回余り達成し、自己3番目にランクされる得意コースだ。え!一番目と二番目はどこかって?
 ラウンドするたびにエージシュートの回数は日々変わってしまうので、正確を期すため少し前のデータになるが、よみうりGCが263回で1位、次いで東京よみうりCCが2番目で92回。木更津は3番目の77回という記録を記載する。これは2020年3月31日現在、総数542回時点の数字である。

 

 非常事態宣言のでた3月は、前半はよみうりの2コース、後半、木更津に集中した。3月は田中さんの誕生月。3日の85歳の誕生日を期して「今年中に700回のエージシュートを達成するぞーっ」とぶち上げたことはすでにお伝えした。そうと決めたら集中力は、いや増すばかり、だ。3月は23ラウンドをこなし月間で20回を記録した。そして4月である。木更津で70歳以上の選手権、ゴールドシニア選手権のタイトルを目指して練習ラウンド、試合、また練習という日々が始まった。4月19日の予選を84のエージシュート、3位で通過した。首位と4打差、26日の決勝ラウンドのストロークプレー、大風の中アウト40、イン39の80で回ったが、首位と5打差の2位に終わった。勝てば、85歳の最年長チャンピオンだったが、70歳以上の若い選手を相手の2位。驚異の底力を見せた。スコア79も全体の2位。そして、エージシュートは通算558回。結果をしっかりと出して見事だった。

 

 4月最後の30日。同コースで三男の雄三さん、その長男で孫の陸雄さん(北里大医学部4年)と4人で木更津を回った。実はグランドシニア最終日から5日連続でラウンドした田中さんだった。「エージシュート、月間20回を目指し、休んでなどいられなかった」のだ。30日は38,41の79、5日連続のエージシュートで562回を数えた。
 「ついにやりました。4月は24ラウンドこなし、うちエージシュート20回。3月に続いて月間20回達成。この2か月間でエージシュート達成は40回だ。やりました」声に挙げ、右こぶしを握り珍しく興奮。笑顔がはじけた。「この2か月で3月が23ラウンド、4月は24ラウンドで各20回の計40回。ハイ、記録です」
 グランドシニアはエージシュートのためのステップに過ぎなかった?それとも、2兎(にと)を追うもの1兎をも得ず、のことわざを知って、エージシュート名人は、2兎を追ったのか。おそらくその双方だろう。エージシュートという不思議な世界をかたち作って人生を面白がる姿に無限のパワーと情熱がほとばしって元気をもらう。コロナなんか、どっかにふっとんでいけー、と叫んでいた。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。