驚異のエージシューター田中菊雄の世界130 武藤一彦のコラムーフェアウエーウッド克服法


 名人のバッグの中にはドライバーのほかに3、5、7、9番とウッドクラブが4本入っている。ドライバーショットの飛距離は230から240ヤード。85歳を迎えても飛距離を維持して健在。ロングヒッターぶりに衰えはない。だが、今回注目したいのは、飛んで曲がらず正確無比なフェアウエーウッドである。その秘密を探るために、番手ごとの飛距離を聞いた。驚くな。こんな姿が浮かび上がった。

 

 「3ウッドは210ヤード、行きます。5番ウッドは200ヤード。7番ウッドは190から200、そして9番は170から190を打つ時に使います。84歳までアイアンは5番アイアンまで入れていましたが、昨春、9番ウッドと入れ代えた。9番ウッドはアイアンより球が上がりやすく使い勝手がいい。ゴルフが楽になりました」―85歳になってエージシュート量産はウッドクラブにあり。最近の好調ぶりの要因だった。

 

 フェアウエーウッド。プロや女子プロが苦も無く使いこなしパワーゴルフを演出するカギを握るクラブをものにしたい。しかし、アマにとってはなんともやっかい、上がらない、打ちづらい、うまくいったためしがないスプーン。名人もかつてそんな時代があったという。が、こんな、時を経ていま、これだけしっかりとクラブの番手と距離を把握してスコアメイクに役立てている。ご利益を受けたいが、どうすればいいのだろうか。

 

 ”本気でやるなら教えましょう“と身を乗り出した。「フェアウエーウッドはすくうな。アイアンでもダウンブローと言いながら球をつぶせない人が同じ地面の上の球を打てないのは当たり前です。アイアンもウッドもクラブヘッドは球をつぶそうと向かっていっているのに、打ち手がすくおうとするから当たらないのです。スイングは遠心力が生命です。球を遠くに置きインパクトで手を伸ばして遠心力を出さなくてはいけないのに近くに立つからすくいたくなる。遠くに立って手を伸ばしクラブヘッドを地面に打ち込む。まず、それがインパクトだと知れ」という。
 さらにこんなイメージと工夫があった。「インパクトはアイアンもウッドも同じ。球を打つのではなく球の下の芝生の根っこを打つものだ」という。
 あるとき、その感覚は、ゴルフ雑誌の連続写真を見て確信した。「インパクト直前のシャフトは、ひものようにしなってシャフトは左曲がりでボールに襲いかかるヘビのようになる。私はインパクトでシャフトは右へしなっているものとばかり思っていたが、そうではなく、ヘビが獲物に食いつくようにシャフトより先に球に食いつくように襲いかかってパクリ!球にかみつくところがインパクトだった。それを見て、食いついたヘビの頭は地面の中に深く頭ごと突き刺さるイメージこそインパクトだと知った」―

 

 そこでこんな実験をやった。「スプーンのソール(底)に鉛を貼り、遠心力を地面に向けた。市販の鉛を1枚、また1枚と張りながらヘッドを重くして打った。鉛1枚が1ポイントだから一枚張るごとに重くなる。当たらなかったらさらにもう一枚貼る。それでもだめならまた一枚。そうしてクラブを重くするとインパクトでクラブは確実に球をとらえた。重いから打ち込め、重くてすくえないから下の芝の根っこまで断ち切った。遠心力で打つことの大切さががよくわかりました」
 すると肩、ひじを張ってすくう力が下に働き腕の力が抜けた。ヘッドが同じところに入りインパクトが安定するとなんと、球は軽々とあがってくれるではないか。フィーリングがわかったら次に鉛を一枚ずつはがして行く。打ちやすいところにいったらそこが正しいスイングウエート。ボールは解放されたように嬉々として宙を飛ぶ。苦手は解消した。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。