驚異のエージシューター田中菊雄の世界133 武藤一彦のコラム


 20年の夏、田中さんにとってもいつにもまして難しい季節となった。コロナ禍による外出制限、季節外れの豪雨禍などが続いた7月2日のことだ。ラウンド中、腰に痛みが走った。6ホールでリタイアし急遽、帰宅。以来、週末の3日間自宅で治療に務めた。
 「エージシュートはその前日の7月1日、通算600回の大台に乗せていた。今年は調子が良く、3月、4月と20回ずつ連続の大台に乗せ、5月は18回、6月19回と4ヶ月で計77回。この4か月のラウンド数を数えたらちょうど100ラウンドを回っていました」と鉄人。100ラウンドで77回、エージシュート率77%の高率だ。だが、85歳、これはオーバーワークだ、とだれもが危惧の念を抱いたものだった。

 

 しかし、このあとの過ごし方がいかにも田中さんらしい。医者にとんで行ったか、マッサージ治療かと思ったが、一切なし。自宅にある愛用のチェアタイプのマッサージ器で背筋、腰をもみ、ふくらはぎをローラーでゴロゴロとほぐし、休養に務めると、あとは自宅風呂場の温泉治療でみごと治していた。自宅の風呂は草津温泉から定期便で取り寄せる温泉。そこに朝昼晩つかり徹底治療してしまったのだ。

 

 -どうしてそんなにお元気なのですか?と思わず聞くとこんな答えが返ってきた。「エージシュートはチェックポイントが多いゲーム。毎日出ても先がある。エージシュートのアンダーパー記録も追っかければきりがないし、記録を残したらさらに記録を出すための努力が控えている。ゴルフの技術、健康管理、、と階段を一つ上がるともう一段、さらにクリアするとまた一段ある。記録に残るならいい記録を出すための努力は惜しんではいけないと。人のできないことをやるのが人生ならエージシュートも人生です」

 

 -年々、飛距離は出るしゴルフが良くなっています。
 「フックスタンスのフック打ちだが、左へひっかけなくなった。アイアンもドライバーも球を近くに置きインアウトに打っていく。トップからいきなりクラブがおりなくなったからひっかけなくなった」
 -夏は芝が伸び難しいコンデションになるが、全く問題なし?
 「夏のタフなゴルフだからラフに負けないゴルフを心掛けている。ラフにいれない、曲げないゴルフに徹し、ラフに入れても負けない。困ったときに困らないゴルフに徹する。3打目で確実にグリーンに乗せるゴルフこそ、エージシュートのゴルフだといっているが、ラフの御し方(ぎょしかた)もこれに尽きる」
 -攻め一辺倒ではだめだ。
 「あきらめないこと。パーを取れたらバーディーもある。目指すから努力はむくわれる。エージシュートを狙うことと一緒だ」
ひとつ、ご参考に。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。