【スマイル再びしぶこの全英】(下)スイング強化にキックボクシング導入のわけ


ボクシングのグラブを使ってトレーニングする渋野(左)と斎藤トレーナー(斎藤氏提供)

ボクシングのグラブを使ってトレーニングする渋野(左)と斎藤トレーナー(斎藤氏提供)

 20日に開幕する女子ゴルフのメジャー今季初戦、AIG全英女子オープンで渋野日向子(21)=サントリー=が日本人初の連覇に挑む。米女子ツアーで4年間活動し、昨年11月に契約した斎藤大介トレーナー(34)の下、米ツアー参戦を想定して体は昨年よりもひと回り大きく、平均飛距離も10ヤードアップした。6月からはボクシングトレーニングも導入。世界一になるための体作りについて、斎藤トレーナーに聞いた。(取材・構成=榎本 友一、宮下 京香)

 斎藤トレーナーは、渋野と青木翔コーチ(37)とよく話し合い、要望を聞いてトレーニングメニューを決める。渋野は昨年よりも体重は約3キロ増。筋肉量が増え、体脂肪は減った。

 「肉体改造とは違う。去年うまくいっていたので、ビッグチェンジをして、バランスを崩さないようには気を付けています。最初は猫背気味でしたが、姿勢は良くなりましたね」

 昨年12月から今年4月、6月と段階的にメニューや負荷を入れ替えてきた。

 「4月前までは(スイングの)動きにフォーカスしてきた。試合の空いた4月から6月までは尻、背筋回りとかを。今までやってこなかったダンベルやバーベルなど、重りを使ったトレーニングが中心でした。今は基本的なことを8か月ぐらいやってきたので、体の使い方に関してはほぼ問題なくできています」

 6月頃からスイング強化を目的にキックボクシングトレを導入した。

 「最初はパンチ、7月からキックも始めました。ゴルフ用に応用したもの。時間的には1回パンチ5分、キック5分ぐらい。(スイングの)軸がブレない動きとか、おなかに力を入れる感覚を養うために。基本的にはずっと月曜日、金曜日にやっています。おなか、足、股関節の使い方も、青木コーチにも『これはいい』と言ってもらっています」

 昨年まで4年間、メジャー2勝のリディア・コ(ニュージーランド)、19年全米女子オープン覇者のイ・ジョンウン6(韓国)ら世界トップ選手を担当した。

 「渋野プロからはジョンウンやリディアとか、米ツアー選手のコンディショニングは何回か聞かれました。特に同じメニューのトレーニングをしたら、その動画を見比べたりとかしていました。最初は2人を目標に『こういう動きをこういうふうにできるようになりたい』と言っていたのが、最近は立場が逆転していて。渋野プロの方がうまくできるし、力強さもある」

 渋野が好きな駄菓子は制限しない。一方で、アスリートとして学ぶべき栄養学的な知識は伝えている。

 「空腹状態でトレーニングをしないこと。炭水化物よりもタンパク質を多めに取ることは言っています。あと、寝ている間に成長ホルモンが出て筋肉の修復とか、筋肉が大きくなるために大事な時間。寝る前はプロテインとか、アミノ酸を体に入れるように、とも言っていますね」

 渋野が渡英後はオンライントレを敢行中。新型コロナでジムが使えないことも想定し、チューブやバランスボールなどを持たせた。

 「部屋で使える物を駆使して。年間を通して体の連動を鍛えるトレーニングは行っていきます」

 連覇の懸かる全英はあくまでも通過点。“チームしぶこ”は、5大メジャー全制覇&東京五輪金メダルの夢実現を見据えている。

 「全英女子は何とか頑張ってもらいたいですね。僕は選手の目標が自分の目標だと思っている。今はそれに向けて、という感じです」=終わり=

 ◆斎藤 大介(さいとう・だいすけ)1985年11月14日、群馬県生まれ。34歳。高校卒業後、専門学校で6年間トレーニング理論を学ぶ。ファイテン社に3年間勤務し水泳、野球、男子ゴルフの片山晋呉ら各選手を担当。2014年から豪州に滞在し、16年からは米女子ツアーでリディア・コ(ニュージーランド)、イ・ジョンウン6(韓国)、畑岡奈紗らをみていた。

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