驚異のエージシューター田中菊雄の世界134 武藤一彦のコラム-記録に向かって前向き


 エージシュートは着々と回数を刻んで、驚くな、8月25日現在、634回に達した。
 例年、冬は苦戦、今年も1月は6回、2月10回のエージシュートだったが、3月、4月は20回の大台を2か月連続で突破、この2月だけでも40回の荒稼ぎ。過去最高の好スタートにつなげた。5月は18回、6月19回、梅雨明け宣言の出ない7月には恒例の北海道、釧路遠征で3回のエージシュートをものにするなど実に2月から6か月連続の“2ケタ”達成である。
 「毎年、1,2月は寒くて苦戦するが、3月3日が85歳の誕生日の私にとって1,2月はプロ野球のキャンプみたいな感覚。エージシューターには誕生日が開幕戦。歳を重ねる分、1打よけいにたたいてもいいという気楽さも手伝って、気持ちに余裕、やる気が出る。今年は過去のどの年より気持ちにゆとり。ゴルフが楽しくて仕方なかった」とノリに乗ったのだった。

 

 600回の大台は7月1日、よみうりGCを39,39,78、雨と風をものともせずエージシュートに5アンダー。だが、ハードスケジュールが災いしたか、茨城のメープルポイントGCの6番ホールでわき腹を痛めたのは翌7月2日。ピリッと右あばら付近に痛みが出た。大事をとってひとり帰宅するというアクシデントに合い、以後3日間休養に専念した。幸い、“途中棄権”の決断がよく大事にいたらなかった。8月6日、よみうりGC、昨年までプロ野球・読売巨人軍の投手コーチの尾花高夫さん夫妻との復帰ラウンド、38,43の81。超ロングヒッターの尾花さんと同グロスで601回目を出し完全復帰をアピールした。このラウンドには筆者もご一緒したが、63歳、尾花さんのキャリーボールに低弾道で対抗、引けを取らない85歳のドライバーショット、勝負強さに舌を巻いたのだった。

 

 令和2年1月から8月25日までのエージシュート数とラウンド数を別表にした。

 

月  エージシュート数  ラウンド数
1     6        19
2    10        23
3    20        23
4    20        24
5    18        28
6    19        25
7    15        25
8    20(25日現在) 20

 

 注目は8月、ラウンド数とエージシュート達成数が同じであるところだ。そう、ラウンドしたすべてのラウンドでエージシュートを達成している。長いゴルフ人生、全ラウンド、すべて連続のエージシュートは、名人といわれる域に達した田中さんにして初の経験である。残りの6日間に注目だ。田中さんに聞いた。
 -エージシュートの連続記録達成など聞いたこともない。世界広しとは言えギネスブックにもないのではないか。このスタミナといい、レベルの高さをどう見たらいいのでしょうか?
 「じっとしていても1日は終わる。親より長生きしている以上、親からもらったからだを大事にする。俺のやることは俺を生んでくれた親のために長く生きることだとやっている。エージシュートはチェックポイントが多いゲーム。距離、方向性,止める、転がす。エージシュートが毎日出ても先がある。トシと同じスコアで回ってもアンダーパー・エージシュートがある。エージシュートはそれぐらい深い。記録が残るのならいい記録を出すための努力をする。健康管理は階段とおなじで、一段上ったらその先にまた一段さらにその先と終わりなくまっている。負けてなるものか、とコロナまで励みにしています」
 そして力を込めた。「他人のためにやるのではありません、自分のためにやるのです」

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。