◆男子プロゴルフツアー 三井住友VISA太平洋マスターズ最終日(15日、静岡・太平洋C御殿場C)
1打差の3位で出たプロ9年目の香妻陣一朗(26)=フリー=が1イーグル、4バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの68で通算8アンダーとし、逆転で涙のツアー初優勝を飾った。2018年にツアー優勝した姉・琴乃(28)との男女のきょうだい優勝は史上3組目。香妻と2位の木下稜介(29)=ハートランド=がともに、今年最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップ(12月3日開幕・東京よみうりCC=報知新聞社主催)の出場権を初めて獲得した。
水しぶきと涙が入り交じった。最終組の木下稜がバーディーパットを外し、初優勝が決まると、グリーン付近で待機していた香妻は“兄貴分”の出水田大二郎(27)の胸に飛び込んだ。プロ9年目での初優勝を仲間から計7・5リットルのウォーターシャワーで祝福され、「これがシャワーか! めちゃ気持ちいい。やっと優勝できた」と、出水田の胸を借りて男泣きした。
絵に描いたような逆転劇だ。1差を追って迎えた18番パー5。最後の4ホールは「緊張で胃が痛かった」が、リーダーボードを確認し、「イーグルを狙う」と奮起。フェアウェーから残り230ヤードの第2打を5アイアンでピン左50センチにつけるスーパーショットを披露。劇的なイーグル締めで逆転した。「最後のパットは緊張しないぐらい近くてびっくり。うれしかった」。1差をつけ、単独首位で最終組を待つだけだった。
物心つく前に横峯さくら(34)の父・良郎氏主宰の「めだかクラブ」で、姉・琴乃(28)に続いてゴルフを始めた。18年には、琴乃と同じクラブで一緒に鍛錬した出水田がツアー初優勝。自身はこのシーズン、約63万円足らず、2年連続で保持したシード権を落とし、「もう勝てる気がしない。ゴルフやめようかな」とどん底に沈んだ。だが、いつまでも悲嘆にくれてはいない。持ち前のイケイケな性格で奮い立ち、はい上がった。史上3組目の男女きょうだい優勝に、「(家族に)感謝したい」と喜んだ。
昨年の米ツアー、ZOZOチャンピオンシップ(57位)に推薦出場。憧れのタイガー・ウッズ(44)と初対面し、「向こうでやりたい」と、世界進出が今後の目標だ。今大会の優勝で1月の米ツアー、ソニー・オープン(米ハワイ州)の切符を得た。
18年に初出場した出水田に続き、今年最終戦の日本シリーズJTカップの出場権を初めて手中にした。「来週からもまた優勝を目指してやりたい」と、最後まで主役を演じ切る。(宮下 京香)
姉・琴乃「優勝おめでとうございます! 最終ホールのイーグルは弟らしいプレーで本当に鳥肌が立ちました。私にとって弟であり同志。2勝目、3勝目を目指してお互い頑張りましょう」
◆国内プロゴルフ界の男女のきょうだい優勝
▽中嶋4兄妹 長男・常幸は4度の賞金王など通算48勝、長女・恵利華は4勝。次男・篤志はトップアマで三男・和也もプロで活躍した。
▽宮里3兄妹 長男・聖志が1勝、次男・優作が7勝。17年9月に現役引退した長女・藍さんは日米ツアー24勝を挙げている。