◆米女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 全米女子オープン 第3日(12日、米テキサス州チャンピオンズGCサイプレスクリークコース=6731ヤード、パー71)
第3ラウンド(R)が行われ、首位スタートの渋野日向子(22)=サントリー=は1バーディー、4ボギーの74で通算4アンダー。リードは3打から1打に減ったが単独首位を守り、昨夏のAIG全英女子オープンに続く日本人初のメジャー2勝目に王手をかけた。「宙に浮いている感じ」と表現した緊張を強いられる中でも大崩れせずに耐えた。71のエイミー・オルソン(28)=米国=が3アンダー2位。6位から出た笹生優花(19)=ICTSI=は77と落とし、4オーバーの25位に後退した。
ピン位置が難しく、平均スコアが74・697という難度の中、渋野は単独首位の座を譲らなかった。「首位にいる緊張感で、最初から宙に浮いている感じ。足が5センチ浮いた状態でゴルフをした。ドラえもんの気分」。2位スタートの初日に発した優等生キャラ「出木杉くん」に続き、気分をアニメ「ドラえもん」に例えた。メジャーの舞台で白熱の優勝争いのさなかでも“しぶこ節”がさく裂した。
球に泥がつきやすく、この日アンダーパーは2人だけ。3打リードで出ると、いきなり3パットのボギーに表情が険しくなった。5番パー5で1・5メートルを決めたのが唯一のバーディー。「気持ち的に楽になった」というが、耐える展開は変わらず。7、18番ともに球に泥がついた影響でショットをグリーン左に外し、ボギーにする不運もあった。13番では2・5メートルのチャンスを外し、パターを振って悔しがった。
今大会3日目にして初めて流れが向かない日でも、アプローチで踏ん張った。17番でグリーン右からの3打目はピンをかすめ30センチのパー。「“膝カックン”ってなった。(惜しくも入らず)日頃の行いの悪さが出た」と明るく振り返った。これまで苦戦した米国の芝に対応力を示し成長を実感。1打リードで終え、「奇跡的にまだ一番上にいられる。(自己採点は)70点」とうなずいた。
日本人が3日目終了で首位に立つのはプレーオフで敗れた1987年の岡本綾子以来、大会史上33年ぶり2度目。米ツアー公式サイトは「スマイリング・シンデレラが2個目のメジャー戴冠へ」との見出しでトップ記事で伝えた。渋野が最終日を首位で迎えた試合は過去2戦2勝。3日間のパーオン率74%は2位で、昨年全英のようなショットメーカー向きの林間コースも追い風だ。
首位の状況に「よくやっていますよね。今年の調子だったり、メンタル面とか(を考えると)、よくここまで頑張っている」とする一方、「褒めた方がいいかなと思うけど、欲深くなりますよね、人間は」と勝利への思いは隠せない。荒天予報の最終日へ「とりあえず粘るしかない」と言い聞かせた。ラウンド後は薄暮の中で球を放ち、ライトに照らされた練習グリーンで黙々とパットを転がし、2つ目のメジャータイトルへ気持ちを整えた。
◆日本人選手の第3R終了時点での首位 1987年大会の岡本綾子(当時36歳)以来2人目。米ニュージャージー州プレーンフィールドCC(6284ヤード、パー72)で第3R終了後、通算3アンダーで1打差の単独首位に立った。大会は豪雨の影響で再三の順延となり、月曜日に行われた最終Rでローラ・デービース(英国)、ジョアン・カーナー(米国)と首位に。火曜日に行われた18ホールの3人プレーオフで惜敗し、日本人歴代最高の2位となった。
◆渋野の最終日逃げ切りV 日米ツアーで最終日を首位で迎えたのは2度で、2度とも優勝。日米5勝のうち2勝が逃げ切りV。昨年5月の日本ツアーのメジャー、ワールドレディスサロンパスカップはぺ・ソンウ(韓国)と並んで首位タイで出て、71で回り1打差の通算12アンダーで優勝。昨年8月のAIG全英女子オープンは2打差単独首位から出て68で、1打差の通算18アンダーで逃げ切り、樋口久子以来42年ぶり日本女子2人目のメジャー制覇を果たした。