松山英樹「優勝して30代に」、菅野智之「5年しっかり実績を残して」…新春対談前編


新春対談を行った菅野(右)と松山は、地球柄のボールを手にしながら笑顔を見せた(カメラ・中島 傑)

新春対談を行った菅野(右)と松山は、地球柄のボールを手にしながら笑顔を見せた(カメラ・中島 傑)

 ポスティングシステムによるメジャー移籍を目指し元日に渡米した巨人・菅野智之投手(31)が、出発前に米男子プロゴルフツアー日本人歴代最多5勝の松山英樹(28)=LEXUS=と新春対談を行った。13年オフにスポーツ報知の対談で初対面して以来、親交が深い2人の対談は3年ぶり3度目。心・技・体、未来予想図などたっぷり語り合った。(取材・構成=高木恵、榎本友一、片岡優帆)

 ■試合お互い刺激

 菅野(以下、菅)「マスターズ、テレビで見たよ。2日目まで8アンダーで首位と1打差だったよね。松山くんみたいに世界の第一線で日本人選手が戦っているのは刺激になる。そういう姿を見て、僕も今回いろんな決断をさせてもらった」

 松山(以下、松)「菅野さんが投げる試合はアメリカで動画でチェックしています。昨年は開幕13連勝ですか。どこまで勝ち続けるのかなと思っていました。でも本当に調子がいい試合って少なかったのかな、と見ながら思っていました」

 菅「調子がいいなと思ったのは1、2試合かな。そこは松山くんも一緒だろうし、共通していると思う」

 松「そうですね。それでも勝てる菅野さんのマネジメント力がすごいです」

 菅「調子が悪い時はその状況で最悪のことを考えて、それが起きないように心がけている。先頭打者なら四球と長打。単打はOKと割り切るようにしている」

 松「ゴルフならハザード(池などの障害物)を避けて、悪くても上位に食らいついていくことですね」

 菅「僕は昨年、少し楽観的に考えるようにした。それまでは7回2失点だと『ああダメだったな』となっていたけど、それって自分を苦しめているなと思って。7回2失点、別にいいでしょ、仕事したでしょって思うようにして。7回2失点とかだとチームの人も『調子悪かったの?』みたいな感じだから『いや褒めてよ』って自分から言うようにした。妥協点を見つけるというか、周りもそういう感じで見てくれるようになって楽になった」

 松「僕は予選をギリギリ通って優勝争いまで行けた時は、勝てなかったけどよく盛り返したなと思うようにしています。でも、すぐに結局優勝できなかったからなという思考になって。そういう大会の最終日の夜は毎回寝られないです。逆に昨年の全米オープンやマスターズのように、2日目まで上位にいた時の3日目、最終日は自分に勝手にプレッシャーをかけ過ぎていたなと。自信を持てるものが少ないから、そうなってしまうんだと思っています」

 菅「松山くんも向上心の塊だから。自分がいくら耐えて4日間いいゴルフをしても、他の選手がそれ以上に良かったら勝てないのが個人競技の難しいところだと思うけど、どこかで楽観的に考えられると楽になれるかも。もっともっと、と思うのは大事だけど、それだけだと苦しいからね。しびれる試合で楽しいことなんて絶対ないし、苦しいことしかない。だから必要以上に苦しむ必要はない」

 ―菅野は31歳、松山は2月で29歳になる。話はそれぞれが今、思い描いている未来予想図に及んだ。

 松「昨年まで7年連続でツアー選手権(プレーオフシリーズ第2戦終了時のフェデックスカップランク上位30人による最終戦)に進めたのは毎週試合を捨ててないからこそですし、そこは自分でも評価している部分です。でも、やっぱり勝ちたいです。僕はアメリカで5勝してから3年以上勝てずに止まっているので。今年はツアー選手権に8年連続で行けなかったとしても優勝したいです。20代最後のシーズン、それを早く動かして30代にうつりたいなと。そうしたら違う世界が見えてくると思うので」

 菅「僕はどんなに頑張ってもあと5年ぐらいしか最前線でやれないと思っている。アメリカに挑戦するにしても、日本に残るにしても、あと5年は死にものぐるいで投げたい。5年しっかり実績を残して、そこから残り何年できるか分からないけど、その先はあまり自分のことに目を向けず後輩に教えたりしながら、人のためだったり、必要としてくれるチームのために投げられれば幸せかなと。今は勝手にそう考えている」

 松「僕もジュニアのことは考えますね。僕が13年に21歳でアメリカに行ってから、日本人でシードを取れた選手は(石川)遼と小平(智)さんしかいない。もっと若い選手が続いてきてほしいなというのはあります。今、ゴルフを始めたばかりの子がこれから先、アメリカを目指してもらえるように何かできたらなとも思っています。まあ、そのためには僕がメジャーで勝てば一番早い話なので」

 ◆菅野と松山の対談

 ▼2014年1月 プロ1年目を13勝、賞金王と、ともに輝かしい成績で終えた2人が、本紙の新春企画で都内ホテルで初対面。ゴルフ好きの菅野と巨人ファンの松山は「体が大きい」という第一印象をお互いに抱きながら13年シーズンを振り返り、技術論や2年目のジンクス、団体競技と個人競技の違いや精神論などを語り合った。

 ▼17年12月 17勝を挙げて沢村賞を獲得した菅野とシーズン3勝して世界ランク2位となった松山は、都内ホテルでの報知プロスポーツ大賞表彰式で約4年ぶりの再会。超一流となった2人は、輝かしい実績を残しても感じる「不安」や「苦しみ」「怖さ」などで意気投合。特に「技術があるから精神も安定する」と心・技・体の中で、技術が最も大事とする意見で一致していた。

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