驚異のエージシューター田中菊雄の世界144 武藤一彦のコラム-85歳時319ラウンド740回


 田中さんの85歳シーズンが終わった。85歳最後の日の3月2日現在、エージシュートは740回に達した。71歳のとき70、自分の年齢を1打下回るエージシュートをやってから15年、日本全国65のコースを自分の年令と同じか、それを下回るスコアなら、なお、良し、と挑んで踏破した740回である。
 ゴルフというスポーツにはまった人ならこの数値に驚きこそすれ、見過ごし聞き捨てにできないはずだ。大のおとなが先の曲がった杖状の棒で行う穴入れゲーム、たかがゴルフだが、されどゴルフである。ゴルフ100年の歴史はこのゲームがもたらす魔性のパワーにもてあそばれたゴルファーによって支えられ、受け継がれて今がある。年齢をハンデキャップとしたエージシュートである。トシを取るほどむずかしくなるスポーツをこんな易しく、面白いものはないと手玉に取ったところが、驚きで在り驚異、あるいは脅威。そこが面白さなのだ。

 

 740回目はホームコースの東京よみうりCCで達成された。達成年齢時のエージシュート数は別表の通り。だが、ここで紹介したいのは、85歳となった令和2(2020)年3月3日からこの3月2日までの丸1年間のラウンド数。なんと319ラウンドである。
 1年365日で休んだのはわずか46日間だけだ。1年は55週であるから週一回の休みも取らずにラウンドをしていたことである。
 それはそうだ。サラリーマンの勤務体系なら土日休みプラス、年間50数日の有給休暇がるが、エージシュートが仕事(?)の田中さんとはいえ、ラウンドが319ラウンド、休みはたったの46日というのは驚きだ。
 実はこの現象に驚いたのは田中さん自身だった。「記録を目指して夢中。夏には12アンダーのエージシュート。40ラウンド連続のエージシュートもあって、気がついたらラウンド数が増えていた。それで記録をまとめてみたらラウンド数も年間300を超えたら、もしかしたらギネスではないか、とこだわった。ハイ、以来、秋、そして冬には回数にこだわって増やしました」ラウンドは自宅から車で20分のよみうりGCのラウンドが増えた。ホームコースは仲間も多いから同伴競技者の仲間をあつめやすい。
 ギネスについては、田中さん、自分の記録が世界の中でどの位置にあるか興味があり、500回を過ぎたとき英国の本社に申請した。が、比較するデータがないという返事で進展はその後ない。納得がいっていないのが現状。自分の足跡が、前代未聞のこと、と片付けられることには我慢がならないのだ。ことエージシュートに関しては回数などだけではなくアンダーパー記録、連続回数などにこだわり目標として見据える。年間のラウンド数に関しては「この319ラウンドに関してはおそらく記録ではありませんか?まして85歳ですからね。年齢が上がるほどに増えるエージシュート、ラウンドとなればちょっと世界と比べたくなります」と興味津々なのである。

 

〇達成年齢と回数
71歳   1
72歳   0
73歳   2
74歳   1
75歳   4
76歳   1
77歳   1
78歳  16
79歳  28
80歳  50
81歳  81
82歳  90
83歳 125
84歳 122
85歳 218
計   740

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。86歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。