驚異のエージシューター田中菊雄の世界149 武藤一彦のコラム-800回達成だ


 エージシュートはついに800回に達した。
 梅雨の晴れ間の6月2日、東京、稲城市のよみうりゴルフクラブ6458ヤード、パー72。インスタートの田中さんは第2打をバンカー、3オン、3パットのダブルボギー。続く11番パー5は会心のドライバーショットを打ち2オン狙いのセカンドショットをグリーンサイドの右バンカー、しかし、パーオンした7メートルを3パットのボギー。あっという間に3オーバー。
 「ここのところドライバーの調子が良くいいドローボールが打てている」といった通り、会心のティーショットを連発した。しかし、3パットをきっかけにショートパットを外す嫌な展開だ。13番打ち上げの難易度2番目の難ホールでまたダブルボギーが来た、ナイスドライバーのあと3打目はグリーン奥へこぼし、下りアプローチは寄らず、ダボ。なんとスタートから4ホールで5オーバー、最悪のスタートとなった。

 

 だが、14番のパー5だった。悪い局面を一気に変えた。グリーン面の見えない上りホールの一番奥に切られた10メートル、下りパットを絶妙のタッチで入れるバーディー、さらに16番パー3は8メートル、これも179ヤードを7アイアンで乗せ、下り8メートルを最後のひと転がりでしっかり入れる絶妙のバーディーで仕留めた。上がり17,18番はボギーにしたが、ハーフを終え5オーバーの41。スタート直後の乱調の5オーバーをそのままキープして、いつものペースである。調子を戻したアウトは、パーが6つ、あとは2ボギー、1ダブルボギーの40、トータル81。86歳、年令に対し5アンダー、堂々のエージシュート800回達成である。

 

 スタートの乱調はそうあることではないが、ゴルフは何が起こるかわからない。大たたきしても挽回の余地があれば腐らずやっていれば結果はついてくる。そんな見本のようなラウンドだった。

 

 「エージシュートは1歳、1打である」―名人の名言が生まれた。こういうことだ。「今年3月3日に86歳になって、85歳の時はたたいてはいけない86が、1歳、年を取ることでエージシュートだ。これがゆとりになるのです。ゆとりが出ると慌てなくなる。これがエージシュートの面白いところです」
 こういうことなのだろうと勝手に推測をすると、凡人は出足でつまずけば、“今日はだめだ”とあきらめるか“トシをとったな俺も”とふて腐れる。“だが”と名人は言う「ゆとりが出ると元気が出る。元気でエージシュートが出るなら、健康でいようと思う。健康に気をつけ体力がつき体にゆとりが出るとゴルフがさらにうまくなっていると感じる。またゴルフが面白くなる。すると試行錯誤ができる。ゴルフの遊びですな。ラフからでもパターで転がして寄せをやってみたり、パットのスタンスを変えたり冒険が楽しめる」―
 年と共にゴルフがうまくなる。エージシュートゴルフの真髄を次回もう少し掘り下げてみよう。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。86歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。