スポーツ報知のカメラマンが2021年に激写した数多くの写真から“年イチ”のベストショットを紹介する企画。馬場秀則記者編です。
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女子プロゴルフツアーの「JLPGAツアー選手権リコー杯」最終日(11月28日、宮崎CC)で賞金女王に輝いた稲見萌寧=都築電気=は、集まったカメラマンの前で大粒の涙を流した。「メイクが落ちちゃう」とおどけた稲見に「萌寧ちゃん、ガッツポーズ!」とお願いしたら、快く両手を突き上げてくれた。夢中でシャッターを切りながら、しみじみ「本当に良かったなあ」と独りごちた。
東京五輪で銀メダルを獲得するなど、今年序盤は無敵の勢いを誇った稲見。だがシーズン後半は腰のヘルニアに悩まされていた。マスターズGCレディース(10月)では、最終日スタート直前に歩行困難になるほどの腰痛で無念の棄権。賞金女王への道も一気に険しくなった。実は私も長年、椎間板ヘルニアの痛みと闘いながらカメラマンを務めてきたので、彼女の苦しみは想像に難くなかった。
痛みに負けず出場した伊藤園レディス(11月)ではダントツの優勝。驚異的な精神力を見せた。そんな稲見選手の賞金女王獲得の瞬間の撮影は、同じ病と戦ったものとして、とりわけ感慨深かった。来年は腰痛を克服して、完全復活での活躍を心から願っている。(大阪本社編集センター写真担当・馬場 秀則)