3人の「桃子」が首位を追走する珍事が起きた。初優勝を目指すプロ11年目の岸部桃子(28)=塩田建設=がツアー自己最少タイの67と伸ばし、通算6アンダーで27位から2打差の3位に急浮上。1打差の2位に大里桃子(23)=伊藤園=、2打差の3位には上田桃子(35)=ZOZO=がつけた。18年大会覇者の鈴木愛(27)=セールスフォース=が8アンダーで首位に立った。
上位で桃子たちが大混戦。未勝利の岸部は2位の大里、3位に並ぶ上田の間に割って入る奮闘ぶりだ。ティーチングプロの妹・華子さん(26)をキャディーに初起用すると自然体で伸ばし、ツアー自己最少タイの67。昨年のヨネックスレディス第2R、FRの4位を上回る自己最高の3位に浮上。「妹のおかげでリラックスできている。武器のアプローチとパットが良かった」と胸を張った。
仲良し姉妹で流れをつくった。14番パー4は第2打でグリーンをこぼしたが、妹から58度ウェッジを渡されると、8ヤードから「うまく転がった」とチップインバーディー。16番ではカラーから8メートルをパターで決めた。「私を知り尽くしているので、ささいなことだけどクラブを渡すタイミングがいい。空気みたい。安心感がある」と相棒に感謝した。
2歳下の妹とは8年前から千葉で2人暮らし。「だらしがない」と自負する岸部だが、家では好きな掃除を率先し「きっちりしている」華子さんが料理などを担当。普段は一人で転戦するが、今回は2人で通勤し「身の回りのことをやってくれて。(2人だと)楽しい」とコース内外で支えられている。
11年3月11日の東日本大震災。高校2年生だった岸部は福島第1原発から10キロ圏内の富岡高で授業中に被災した。翌年のプロテスト合格後も被災地への思いを持って戦う。先月、東北で地震があった際には福島にいる家族に連絡し「『成績見てる』と言ってくれた。もっと頑張らないといけない」と初Vへ思いを強めた。
最終日は自身初の最終組スタート。「緊張はすると思うけど、妹と楽しくできたら」。首位の鈴木を追いつつ、大里、上田との“桃子対決”を制し、プロ11年目で念願の初優勝をつかむ。(宮下 京香)
◆岸部 桃子(きしべ・ももこ)1993年12月25日、福島・いわき市生まれ。28歳。8歳でゴルフを始め、福島・富岡高卒業後の2012年7月、プロテストに一発合格。16年、九州みらい建設グループレディースで下部ツアー初優勝。昨年のツインフィールズレディースで2勝目。レギュラーでは昨年6月のヨネックスレディス4位が最高。桃子の由来は中国で桃が縁起がいいことから。162センチ、52キロ。