驚異のエージシューター田中菊雄の世界164 武藤一彦のコラム-新たな発展驚異の世界


 エージシュート1000回目は3月24日、ホームコースのよみうりゴルフクラブでいつもの仲間と一緒のラウンドで達成された。同伴競技者を改めて紹介すると81歳、久家さん、80歳、長澤さん、そして、87歳田中さんにとっては数少ない年長者91歳、遠藤さん。田中さんが40,44の84でさらりと回って見せるとなんと91歳、遠藤さんも45、45の90のエージシュート、大いに盛り上がったことはすでに紹介した。その遠藤さん、実は東京国際GCで誰知らぬもののいないエージシューターとして知られ、その数400回を超すという手練れものである。類は類を呼ぶというが、お2人はこの半年ほどで急接近、この頃は、良きライバルとなって一緒にプレーする仲。しかし、それら経緯やエピソードはのちにおくとしてここでは、こうしてエージシュートを通じ高齢ゴルファーが集まる環境が整ったことを強調したい。ちなみにあとのお2人は20年を越すゴルフ仲間。長澤さんはこの2年ほどですでに3回、エージシュートを達成している。久家さんもあともうすこしという予備軍の一人である。
 なんでこんなことを改めて強調するかというと田中菊雄の驚異の世界、今や田中さんだけの世界ではないということを知っていただきたかった。田中さんが初めてエージシュートをやったのが71歳、80歳までの10年でエージシュートは計50回。だが、知る人ぞ知る存在、それほど騒がれなかった。だが、78歳で初めて年間16回、以来79歳28回、79歳50回、80歳81回、82歳で90回とエージシュートを5年連続、2ケタ。さらに83歳で年間100回を初めて越える125回。このあたりからその周辺は急激ににぎやかさを増した。以来84歳122回、85歳で200回の大台を越す218回、86歳時の2021年、年間自己最多記録となる246回とエージシュートは年々“増産”の一途をたどった。新聞の特集や、ユーチューブの映像で流れ「エージシュートって面白そう」と話題。そして、2022年3月3日、87歳の誕生日を迎えた田中さんは24日に1000回の大台へ到達、以後、記録は4月15日現在、エージシュートは1015回を数えている。
 「どうやったらエージシュートができるの?」―今や、ゴルフ界だけでなく周辺は興味しんしんである。
 結論を言おう。年齢と同じスコアか、それ以下のスコアで18ホールを回るゴルフにしかない、ゴルフ独自のスコアにこだわるエージシュートは、他のどのスポーツにもない特質をもって魅力にあふれゴルファーを魅了する不思議な特質があるようだ。強靭な心技体を求められるスポーツの欠点はそのどれか一つが衰えれば引退しなくてはならない。だが、この競技は年をとっても年齢に適した心技体が整いさえすれば生き残れる。そうだ、若者には無理だが、高齢者にはもってこいのスポーツなのである。
 田中さんの周囲では新たなエージシューターが次々と誕生、それ以前からのパイオニアや名人たちが集まり始めた。昨年9月、田中さんを会長とした一般社団法人 日本エージシュートチャレンジ協会の「チャレンジカップの大会」(東京・桜ヶ丘CC)にはハンデ90から23までの男子と21人の女性を含む計169人が参加した。いうまでもなくハンデは参加者の満年齢。男子・総合はただ一人エージシュートの田中会長、レディス(女子)は74歳、菊池栄子さんが優勝した。大会はハイハンデ(高年齢)が有利なのはいなめない。そこで40,50,60,70代の年代別の部もある。若者たちは将来の日本社会の姿をわが身と照らし合わせ、高齢者に敬意を払い、そのゴルフに対する意欲を讃え、共に楽しんだようだ。コースには良い雰囲気が蔓延した。ゴルフの新たな楽しみ方が生まれたと実感したものだった。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。87歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。