青木瀬令奈、神頼みまで「どうしたら勝てるのか」やれる限り尽くした1年ぶり優勝「人生を変える3勝目」


通算14アンダーで優勝した青木瀬令奈(カメラ・堺 恒志)

通算14アンダーで優勝した青木瀬令奈(カメラ・堺 恒志)

◆女子プロゴルフツアー 資生堂レディス 最終日(3日、神奈川・戸塚CC=6570ヤード、パー72)

 青木瀬令奈(29)=フリー=が、大会新記録の通算14アンダーで2位に2打差をつけて初の逃げ切りで、昨年6月以来のツアー通算3勝目を飾った。1打差首位で出ると、6バーディー、3ボギーの69で唯一4日間60台を並べた。昨年4月には引退を覚悟したが、この1年、競技に向き合うストイックな生活を送り、神社での優勝祈願などやれることを全てやり尽くし、勝利をたぐり寄せた。

 最終18番、20センチのパーパットを決めた青木はバンザイして、ようやく笑顔になった。「1年ちょっと、毎日苦しかった。人生を変える3勝目を挙げることができてうれしい」。約1年ぶりの栄冠は「やってみたかった」という初の逃げ切り。「甘さを捨てて勝ち取った1勝」と、その重みをかみ締めた。

 開始2連続ボギーで首位陥落。それでも「マイナス思考にはならなかった」。15年途中から二人三脚で歩む、キャディーの大西翔太コーチから「スコアボードを見ない方がいい」と助言され、18番グリーンまで情報を封じた。プレーに集中し、3、4番で連続バーディー。11番パー3は、得意の3ウッドでピンまで「1グリップ」につけるスーパーショットを披露。第1日からの最高気温が36・1、34・2、32・9、32・5度という“猛暑”の大会で勝ちきった。

 17年の初Vから遠ざかっていた昨年4月には、大西氏に「引退しなきゃいけないかも」と打ち明けた。体力、技術が限界にきている―。青木の考えに、大西氏は「絶対に優勝できると思う」と説得。後日、青木は「今まで甘かった。また一からやります」との宣言とともにリラックス時間のゲームなどを断ち、シャワーだけだった入浴を、湯船につかり水風呂と交代浴にするなど、より競技に打ち込める生活に変えた。

 自分を見つめ直すと、同6月に通算2勝目。その週から始めた“ざんげノート”には「どうしたら勝てるのか」を寝る前にひたすら書きつづった。今年は福岡、静岡、新潟など遠征先で神社を訪れて神頼みと、やれる限りを尽くした。

 生涯獲得賞金は3億円を突破した。小学生時代から、不動裕理(13億円超を稼ぎ歴代1位)のファンで「不動さんへの第一歩というか、積み重ねで頑張ります」と、はにかんだ。来年30歳を迎える小さなゴルファーは「この1勝がすごく大きな意味を持つ。これからも勝利数を重ねていきたい」と、貪欲に勝利を追い続ける。(岩原 正幸)

 ◆いい話

 前回優勝が無観客開催だったこともあり、コロナ禍以降、青木にとって有観客での優勝は5年ぶり。「久しぶりにギャラリーの皆さんの前で優勝できた。すごく喜んでくれて、恩返しができた」と格別なものだった。

 試合中止が相次いだ20年4月、本紙のインタビューで「スポーツ観戦がない、この現状に慣れてほしくない。今は動画などで選手を身近に感じていただけたら」と語っていた。選手会長にあたるプレーヤーズ委員長として、コロナ下でできることは何かを考え、積極的にSNSで情報を発信し、不安を抱える選手たちの相談にも乗った。現在は委員長に加え、日本女子プロゴルフ協会が任命したアンバサダー役「ブライトナー」を務める“ツアーの顔”は、華やかな女子ゴルフ界を明るくしている。(正)

 ◆青木 瀬令奈(あおき・せれな)1993年2月8日、群馬・前橋市生まれ。29歳。7歳でゴルフを始め、前橋商高で2008年全国高校選手権夏季大会制覇。11年にプロテスト合格。17年ヨネックスレディスでツアー初優勝。昨年、宮里藍サントリーレディスで2勝目。ドライバーの平均飛距離は約220ヤード。趣味は宝塚観劇。153センチ、50キロ。

 ◆青木の優勝用具 ▽1W=ゼクシオX(ロフト角9.5度、硬さ5R、45.5インチ)▽3W=スリクソンZF85▽5、7、9W=ゼクシオ10▽5、6UT(25、28度)=スリクソンZH65、▽7UT(30度)=スリクソンZX5▽8、9I、PW=スリクソンZX7▽ウェッジ(52、58度)=グラインドスタジオ▽パター=オデッセイ・TEN トリプルトラック▽ボール=スリクソンZ―STAR XV(ウェッジ、パター以外は住友ゴム工業社製)

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