驚異のエージシューター田中菊雄の世界167 武藤一彦のコラム


 エージシューター田中さん恒例の北海道・釧路遠征が今年も7月中旬におこなわれた。2017年、82歳の時から続く釧路CCとの交流は早くも6年目。これまでの5年でエージシュートを12回。地元の新聞に快挙が掲載されるなど、著名人である。ドラマチックな一週間となった。

 

 滞在中の7日間を振り返る。
 1日目、87歳の田中さん、年齢より1打多い88を打ち悔しがったが、釧路CCは、平然とエージシュートを公認した。「当コースは会場以来、エージシュートは数え年を含め公認している。何ら問題はありません」おめでとう、と田中さんの1080回達成に沸くのだった。
 数え年が年齢基準だった戦前の名残りか?高齢を良し、とする日本である。数え年のエージシュート認定は、今も残るゴルフ界の習わしでもある。田中さん自身の戦績にも過去3回ある。「否定しては角(かど)が立つ。古き時代の良き慣習をムゲに否定もできない」。普段のラウンドでは数えのカードは提出しない田中さんだが、受け入れた。

 

 2日目は豪雨のため4ホールでプレー中止。第3日、45,41,86で1081回。第4日目、大雨で91をたたき完敗。そんな翌日、44,44、またも数え年の88。地元は「なんて運のよい人だ」と喜んでくれた。1082回目。その翌日、41,41の82、1083回。帰京する最終日44,40、84。1084回で締めくくった。7日間の滞在で5回のエージシュート達成。釧路では計17回のエージシュートはコース別達成数の4番目。遠征に強い一面を見せて自信となった。

 

 「老いてますます盛んというが、体力は落ちている。飛距離だって落ちた。そんな中で、歳を重ねるに連れてエージシュートの回数が増える。快感だ、生きがいというのはこういうことなのかと元気になる。本当に私はついている男だと思う」
 71歳で初めてエージシュートを達成以来77歳までに10回、78歳で2桁の16回が出ると82歳には90回、その間、5年間2桁が当たり前。しして、83歳100回越え、84歳からは200回越え、86歳では年間246回の年間最多である。
 「生涯で1回やればすごいといわれることを年間で200回。快感がある、生きがいがある。老いを超えるとか、克服するとかいうが、エージシュートは年齢が増えるとフィールドがやさしくなるんです。と言ってはばからない。「年を取って、若いころの俺はすごかった、と言ってどうなります?エージシュートは加齢がプラスに働く。87歳が16年やって言うんだから間違いありませんよ」釧路は今年も田中さんを成長させた。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。87歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。