出水田大二郎 最難関18番でブラボーパット 2差2位からさあ初メジャー制覇


18番、ホールアウトしキャディとグータッチする出水田大二郎(カメラ・小泉 洋樹)

18番、ホールアウトしキャディとグータッチする出水田大二郎(カメラ・小泉 洋樹)

◆報知新聞社主催 国内男子プロゴルフツアー 今季最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 第3日(3日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 大会2年ぶり3回目の出場で、メジャー初優勝を目指す出水田(いずみだ)大二郎(29)=TOSS=が、通算9アンダーに伸ばし、首位と2打差の2位に浮上した。4打差8位から出て5バーディー、ボギーなしで、この日のベストスコアタイの65をマーク。鹿児島・鹿屋市出身で実家は鮮魚店を営むプロ12年目が、4年ぶりとなるツアー2勝目でビッグタイトルを釣り上げる。小平智(33)=Admiral=が通算11アンダーで首位をキープした。

 まさに“ブラボー”な1打だった。最終18番パー3。出水田は冷静にラインを読み、勇気を持ってパターを振った。「曲がり幅を、カップ3つ(分)ちょっと見た」。打球は急激なスライス軌道を描き、カップに吸い込まれた。最難関ホールで、この日2人しかいないバーディー締め。「バッチリでした。最高」。カタールW杯でドイツ、スペインを破り、決勝トーナメント進出を決めた森保ジャパンに負けじと観衆を沸かせた。

 躍進の秘密は長尺パターだ。新調してもらい、2か月前から練習時のみ使用。「ヘッドを出す感じが、エースパターで打つ時のフィーリングに合う」と14番でも4メートルを決めきった。3日間の計77パットは2位に4差のトップ。グリーン上を支配し、自身の今大会最少ストロークも1打更新した。

 成長は、技術だけではない。18年8月以来遠ざかる2勝目を「慌てて、バタバタしてスコアを落としたり」と勝負どころでのメンタルの弱さと分析。向上を求めた手段の一つが読書だ。最近で印象深いものが、女子テニス・大坂なおみのコーチを務めたサーシャ・バイン氏の著書。「目の前のことに集中するための呼吸法。しっかり吸って、吐くという意識」。具体的には5秒間吸って、5秒間吐くということを今季のラウンド中にも実践し「落ち着いて(プレー)できるようになった部分がある」と自覚する。

 世界最高峰の舞台を経験したことも、好影響を加えた。今年6月の全米オープンで海外メジャー初出場。予選落ちだったが、「大観衆の中でできたのは大きな財産になった。ギャラリーの前でも楽しむことができている」。ゴルフを楽しむという原点に戻り、今は言葉にも余裕が出てきた。

 実家は鹿屋市では有名な「出水田鮮魚店」。183センチ、90キロの屈強な体格は、幼少期から小魚をバリバリ食べたおかげ。ツアー上位の飛距離に、繊細なスキルを加え、「ここを目標に1年やっている」と日本シリーズの夢舞台で、通算2勝目の好機をつかんだ。初出場の18年大会は2日目で2位タイにつけながら12位。20年も8位に終わった。鹿児島県出身の優勝者は、まだいない。「出られるだけで光栄だけど、優勝できれば最高」。師走の東京で、最大の歓喜をつかむ。(宮崎 尚行)

 ◆東京よみうりCCの18番パー3 227ヤードと距離が長く、向かい風の場合、ウッドを持つ選手も多い。奥から手前への急傾斜が最大の特徴。手前から攻めるのがセオリーとされている。すり鉢状の観客席に囲まれ悲鳴と歓声が交錯する、優勝争いやプレーオフなどで数々のドラマを生んできた名物ホール。1998年の第35回大会第3日にエドアルド・エレラ(コロンビア)が、大会初&唯一のホールインワンを達成。この日の平均スコアは3.100で最難関ホールだった。

 ◆出水田 大二郎(いずみだ・だいじろう)1993年2月5日、鹿児島・鹿屋市生まれ。29歳。9歳から横峯良郎氏主宰の「めだかクラブ」でゴルフを始める。鹿児島・樟南高では九州ジュニア(15~17歳の部)3連覇。卒業後にプロ転向し、2012年に下部ツアー1勝。18年に初の最終日最終組で回ったRIZAP・KBCオーガスタで初優勝。今季の予選通過率は86・957%で5位。賞金ランクは26位(国内のみ)。183センチ、90キロ。AB型。家族は両親と兄、姉。

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