◆女子プロゴルフツアー 楽天スーパーレディース 最終日(30日、兵庫・東急グランドオークGC=6636ヤード、パー72)
2打差2位からスタートした19歳の桜井心那(ニトリ)が、6バーディー、ボギーなしの66で回り、通算21アンダーで逆転優勝を飾った。3戦前の資生堂レディスで初優勝したばかりの新鋭がツアー史上年少5番目の19歳167日で初優勝より難しい言われる2勝目を挙げた。昨季は下部ツアーで5勝。勝ち方を知っている桜井は今後、日本を代表するゴルファーになる可能性を秘めている。来年のパリ五輪出場にも意欲を示した。韓国のイ・ミニョン(Q CELLS)が1打差2位。首位から出た元賞金女王の鈴木愛(セールスフォース)は2打差3位。第2日にツアータイ記録の8連続バーディーをマークした小祝さくら(ニトリ)は4位だった。
29歳の元賞金女王と19歳の新鋭。猛暑の中、文字通り「熱戦」が繰り広げられた。その勝負の流れは、元賞金女王の鈴木に移りかけた。
2打差2位から出た新進気鋭の桜井が1打逆転して迎えた13番パー5。鈴木が7メートルの難しいバーディーパットを先に沈めた。その直後、桜井は1メートルのバーディーパットを入れ返すことができなかった。 スコアは通算20アンダーで並んだが、鈴木の巻き返しが始まる情勢になった。
「鈴木さんが長いパットを沈めた後、邪念が入った。スコアとか順位とか色々と考えてしまいました」と桜井は正直に明かした。
しかし、ここからが未知数の力を秘める19歳の真骨頂だった。続く14番パー4でドライバーをかっ飛ばし、残り126ヤードの第2打をピンの真上1メートルにピタリとつけた。今度はきっちりと1メートルのバーディーパットを沈め、再び、首位を奪った。
「13番でミスしてしまい、次は絶対にバーディーを取る、と全集中しました。怒りのバーディーです」
結果的に勝利を決めた14番のバーディーを桜井は苦笑いしながら振り返った。
ゴルフにおいて「怒り」はマイナスに作用することが多い。しかし、桜井はプラスの力に変えた。ドライバー平均飛距離ランク3位(256・32ヤード)と高い身体能力に加え、勝者のメンタリティーを兼ね備える。
3戦前の資生堂レディスで初勝利を挙げたばかり。その時は「勝っちゃった」と振り返ったが、今大会では第3日を2打差2位で終えた後「2勝目は狙って勝ちたい。明日、もちろん、狙います」と意欲的に話していた。有言実行の勝利だった。
プロゴルフの世界では「2勝目は初勝利より難しい」という格言がある。その2勝目をツアー史上5番目の若さで手にした。昨季、下部のステップアップツアーで驚異の5勝。勝ち方を知っていることを改めて証明した。
10代で2勝を挙げた選手としては畑岡奈紗、宮里藍さんらビッグネームが並ぶ。「私はまだまだ下手くそなので名前を並べてほしくないです」と謙虚に話しつつも「皆さんみたいに海外で活躍したい」と意欲を示した。来年のパリ五輪についても「世界ランクを上げて出場したいです」と前向きに話した。まさに日本を代表する女子ゴルファーになる可能性を十分に秘めている。
◆桜井 心那(さくらい・ここな)2004年2月13日、長崎市生まれ。19歳。父の影響で6歳からゴルフを始める。21年8月、長崎日大3年時に全国高校ゴルフ選手権(緑の甲子園)個人戦女子で長崎県勢初優勝。同年11月、高校在学中にプロテスト一発合格。22年はレギュラーツアー5戦に出場し、北海道meijiカップ2位などでポイントランク94位。下部のステップアップツアーでは16戦に出場し、5勝。2511万4100万を稼ぎ、断トツで賞金女王となり、今季からレギュラーツアーにフル参戦。7月の資生堂レディスでレギュラーツアー初勝利。家族は両親と兄2人。166センチ、62キロ。