◆女子プロゴルフツアー開幕戦 ダイキンオーキッドレディス 最終日(3日、沖縄・琉球GC=6595ヤード、パー72)
単独首位から出た岩井千怜(ちさと、21)=ホンダ=が大会記録を4打更新する通算18アンダーで開幕戦を制した。5バーディー、ボギーなしの67をマークし、通算5勝目を手にした。冷静沈着なプレーで、西郷真央(22)=島津製作所=とのマッチレースを制し、逃げ切りでの開幕戦V。双子の姉・明愛(あきえ、21)と姉妹での海外メジャー今季初戦、シェブロン選手権(4月18日開幕、米カールトンウッズ・クラブ)の出場を射程に捉えた。
ウィニングパットを沈めた岩井千は右手を突き上げた。「最後まで気持ちを切らさず良かった」。西郷とバーディーを取り合う死闘を制し、優勝スピーチでは涙を流した。「オフはつらかった。今日のゴルフもつらかった。ホッとしたし、みんなに元気を届けられて良かった」と思いがあふれた。
鍵となったのは最難関の15番だ。1打リードで迎えたが、第3ラウンドではダブルボギーをたたき、この日も平均4・1667だったホール。「何かが動き出すだろうと思っていた。今まで以上に気持ちを強く、冷静に持つと意識した」と言い聞かせ、パーをセーブした。対する西郷はラフとカラーの境目からの第3打をピン奥へ。難易度の高い下りのパットを残し、結果はボギー。差は「2」に広がり「私にもチャンスが来た」と前向きな心で押し切った。
「今週は状況判断しながらゴルフをできた。攻めるところの見極めや、クラブ選択が今まで以上にできていた。追いつかれても、バーディーを取れば大丈夫だと思っていた」と岩井千。その言葉を待つまでもなく、プレーを見守った父・雄士さん(51)はこの日のプレーを「落ち着いていた」とたたえ、東勝年キャディーも「感情の起伏が少なかった」と称賛するほどの落ち着きぶりだった。
オフの努力も実を結んだ。「ご飯が喉を通らなかった時もあった。早起きして行くのもつらかった」。週3回、クラブを握るだけではなく、ウェートトレーニング、ランなどに取り組み、総力を引き上げることを狙った。「トレーニングをやってきて良かった。間違っていなかった」と体だけでなく、精神面の成長を実感している。
姉妹での海外メジャー挑戦&パリ五輪出場に意欲を見せる。父は「今の目標は2人そろってシェブロン(選手権)」と明かした。18日時点の世界ランク40位以内なら出場可能に。この優勝で岩井千の同ランクは49位前後に浮上する見込み。今大会19位に終わった姉は開幕前、36位につけており、現実味を帯びてきた。「来週からも優勝目指して頑張る」と岩井家の目標達成のため、88年のツアー制施行後初の開幕2週連続Vを見据えた。(富張 萌黄)
◆大会記録更新 岩井千は通算18アンダーで大会記録を4打更新。今年で37回目の開催となるが、2015年までは3日間大会で行われていた。54ホールストロークでは08年の宋ボベ(韓国)、15年のテレサ・ルー(台湾)が14アンダーを記録。4日間大会になってからは、21年に小祝さくらが最終日に68をマークし、14アンダーで制していた。