香妻陣一朗 LIV1年目はケプカ、ラームに驚き「トレーニングが本当にすごい」 来季は優勝が目標


本紙インタビューに応じた香妻陣一朗(カメラ・岡野 将大)

本紙インタビューに応じた香妻陣一朗(カメラ・岡野 将大)

 8月のSansan・KBCオーガスタで、日本ツアー2年ぶりの3勝目を挙げた香妻陣一朗(30)=国際スポーツ振興協会=が9日までにスポーツ報知の単独インタビューに応じた。今季は高額賞金ツアーのLIVゴルフに挑戦。試合のスタイルや世界トップレベルの選手たちとの交流など、刺激を受けた1年間を振り返った。シード獲得はならなかったものの、来季もLIVでのプレーが決定。「優勝して、最後は日本人チームを作りたい」と2年目の飛躍を誓った。(取材、構成=富張 萌黄)

 香妻にとって2年ぶりの優勝は、これまでの2勝と違う格別な思いがあった。20年の三井住友VISA太平洋マスターズ、22年の東建ホームメイトカップはともに無観客。地元・九州での初Vは自身初の有観客で、悲願だった家族との記念撮影が達成できた。

 「九州で優勝したいっていうのはありましたし、何しろ家族の前で優勝したいっていう思いがあった。母親も妻もすごい喜んでくれましたし。家族と優勝の写真を撮れたというのは初めてのことだったので、すごい良かった」

 昨季は20試合に出場するも、トップ10入りは2回のみ。試行錯誤しながら、手応えをつかんだのは日本ツアーのシーズン終了後だったという。

 「スイングでずっと悩んでいて、いろんなことを去年やったんですけど、はまらなかった。それがシーズン終盤にアジアンツアーに行って、いきなりきっかけをつかんだ」

 その後、12月にはLIVゴルフの予選会を受験。勢いそのままにわずか3枠の狭き門を突破し、出場権を手にした。メジャー5勝のブルックス・ケプカ(米国)や元世界ランク1位のジョン・ラーム(スペイン)と同じフィールドで戦った1年は多くの刺激を受けたと振り返る。

 「今まで見ていた世界のトップの選手たちと同じホテルで、みんな同じタイミングで動くので、そういう選手たちと触れ合うことが多い。だから、どういうトレーニングしているんだろうとか、どういう食事しているかとかを全部見ることができた。ケプカのトレーニング本当にすごくて。スタート前に朝、ジム行ったらケプカがめちゃくちゃ(負荷が)重いトレーニングをがんがんやったりしていて。試合のあるなしに関わらず、こんなやっていいんだって。それを見ながらケプカに『そんなやって大丈夫か』と聞いたら『おまえがやったら子犬になるぞ。震えて打てないぞ』と言われたり。選手が全員、ケプカはすごいっていうくらいトレーニングやっているんで、そこまでやっても全然いいんだと。今までほとんど試合中トレーニングは軽いのとか、強度を抑えてやっていたんですけど、そういう選手たちがやっているのを見て、普通に試合期間中も重いのでやったりするようになった」

 海外を転々とし、様々な芝質のコースでプレー。KBCオーガスタも高麗グリーンで芝目も強く、これまでは比較的苦手としていた。LIVを通し、技術面でも様々な成長を感じたという。

 「海外のツアー転戦してたらほとんど目があったりとかグリーンの癖が日本と違う試合が多くて、そこで慣れてきた。あの試合(KBCオーガスタ)も久しぶりに帰ってきてプレーしたら全然、苦じゃなかった。今年はどんなコースかわからなかったので、クラブは常に2セット持って行った。下が硬かったり、軟らかかったりするのんで、それによってクラブを変えたりしますんで。日本だとクラブセッティングほぼ1年間変えないんですけど、向こうに行ったら毎週変えた。その芝に特化して、よりいいクラブでやろうと。フェアウェーも広いですし、飛距離が大事になってくるので、自分に合った飛ぶクラブを使おうとかトレーニングして距離を伸ばそうっていうのもあった。それが成功したのかなと思う」

 日本ツアーとの違いは多くあるが、最も衝撃を受けたのがプレー中に大音量の音楽が鳴っていること。最初は抵抗があったものの、すぐに慣れ、雰囲気にも溶け込んだという。

 「今までのゴルフって静かにギャラリーも気を使って見ていたと思う。だけど、それがなくてみんなしゃべっても、騒いでいても大丈夫。そういう面では斬新。選手たちもずっと音楽鳴っているので、ギャラリーが騒いでいても気にならない。そういった面ではギャラリーに対しても面白い大会だなと思った。キャディーの話が聞こえないくらいのホールもあるので、変な感じはしますけど、スポーツ見るのって騒いでなんぼだと思うんで斬新だなと」

 最終戦のチーム選手権は最下位の13位からスタートするも、準々決勝でケプカ、準決勝で今季メジャー覇者のブライソン・デシャンボー(米国)率いるチームに“下克上”。決勝まで進んで2位で終え、チームで700万ドル(約10億5000万円)を獲得した。

 「最後の試合はみんなテンション高くて、今まで悪かったけど、ここはみんなで頑張ろうって言って。普段たまにしか行かないですけど、毎日ご飯に行って決起集会して、チームはすごくテンションが高かったというか、頑張ろうっていうのが最終戦はあった。最後の1週間はみんな調子よくて勝てたっていうのはあるんですけど、ああいうトップのところに勝てたっていうのはみんなすごい喜んでいましたし、僕も活躍できたかなと思う」

 ポイントランクは45位で終え、シード獲得はならなかった。25位から48位の「オープンゾーン」に位置づけられ、団体戦を争うチーム間のトレード、または放出の対象になっていたが、今季のチームキャプテンから「来年も一緒にプレーしよう」と電話を受け、25年シーズンもプレーが決まった。参戦2年目となる来季はさらなる活躍を誓った。

 「今年は1年目だったので結構、慣れないことも多くて、慣れるのに大変でしたけど来年は慣れて、その辺で気を使うこともなくなると思う。優勝争いをして優勝して、最後は日本人チームを作れるくらいまでいきたい。そのときに一番いい選手たちとやって、日本人チームで日本のゴルフファンの人たちも応援してくれるようなものを作れたら」

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