
寺西飛香留
◆男子プロゴルフツアー 前沢杯 (4月24~27日、千葉・睦沢町・MZGC=6652ヤード、パー70)
【ゴルフ担当・星野 浩司】 男子選手に負けないほどの豪快ショットに驚かされた。女子初の男子ツアー選手として今季2戦目に臨んだ寺西飛香留(フリー)。ゆったりとしたバックスイングから鋭く振り抜くその様に、どよめきと拍手が起こった。
コースは18ホールで合計6652ヤードと男子ツアーでは距離が短い。それでも、1番は505ヤードのパー4。女子ツアーであればパー5に設定される距離の長いホールだが、飛距離が自慢の寺西はものともしなかった。第1日、第2日は堂々のパー。最終日は第1打を強風も後押しして280ヤード以上飛ばし、残り200ヤードをピン横7メートルに2オン成功した。しっかりパーとし「(2打でグリーンに)乗りましたね。すごい自信になります」と無邪気に笑った。
初日は、同じ女子選手の菅沼菜々(あいおいニッセイ同和損保)とともにイーブンパーの70。男子ツアーに出場した女子選手としては、05年カシオワールドオープン第1日のミシェル・ウィー(米国)の1オーバーを抜き、史上最少スコアをマークした。「(記録は)知らなかった。うれしいけど、アンダーパーを目指したい」と満足はなし。続く2日目も同スコアで連続達成してみせた。
なぜ、ここまで飛ばせるのか―。寺西に質問をぶつけると、「気合です。絶対飛ばすっていう気持ち」と即答された。全く疑問が解消されずに終わるかと思いきや「でも、本当は…」と切り出し、「もともと飛ぶ方じゃなかったので、振る練習して徐々に伸びていった。あと、バックスイングをめっちゃゆっくり上げるので、タメにつながってると思う」。1秒、2秒、3秒とゆっくりクラブを後ろにひいていくスイングなど、飛距離アップの理由を次々に語ってくれた。
指導を受けるコーチはいない。本やYouTubeなどを見て、独学で技術を学んでいる。女子の名選手を参考に…と思いききや、「推しは倉本(昌弘)さん」と実に渋い。国内ツアー30勝を誇り、日本ゴルフツアー機構副会長を務める倉本の著書「本番に強くなるゴルフ」を熟読し、レッスン系の動画を見るなど「シンプルなやり方で教えてるので、参考にしてます」と明かした。
さらにもう1人、世界的レジェンドの名前を挙げた。「ベン・ホーガンの本を買って読んでます。クラブの選び方やグリップの持ち方、足の位置や向きはこう…とか」。身長170センチと体格は大きくないが、米ツアー64勝で4大メジャー大会を制した名選手の著書をバイブルにしている。「定期的に本を買って持ち歩いてます。書いてある練習法をすぐ試しちゃう」。研究熱心な一面が、飛距離や技術を高めている。
今季開幕戦の東建ホームメイトカップは予選落ち、前沢杯は91位で終えた。4日間大会で初めて全日程をプレーし「完走できてよかった」と笑顔。「飛距離や技術力の違いを感じて、大きな勉強になった。今回の経験を生かして、さらに追求したい」と言い切った。
次の男子ツアー出場は決まっていないが、直近では女子の三木市レディス(兵庫・東広野GC、5月8~9日)に出場。女子プロテストは9月の2次予選から挑戦する予定だ。好きな言葉「日日是好日」を胸に、一日一日を大切に、楽しく、ゴルフを探求していく。
◆寺西 飛香留(てらにし・ひかる)2000年9月30日、兵庫県生まれ。24歳。4歳の時、父の勧めでゴルフを始める。和歌山・高野山高卒。24年8月、男子ツアーの来季出場権を争う予選会(QT)に出場し、49位。出場総人数の90%までに与えられるQTランキングが付与され、女子では初となる日本ゴルフツアー機構ツアープレーヤーの権利を獲得。同11月の女子最終プロテストは77位で不合格。157センチ。