
夫でキャディーの森川陽太郎氏(左)とラインを読む横峯さくら
◇女子プロゴルフツアー 北海道meijiカップ 最終日(10日、北海道・札幌国際CC島松C=6642ヤード、パー72)
ツアー通算23勝の39歳・横峯さくら(エプソン)が通算5アンダーで9位に入り、3年ぶりにトップ10入りを果たした。
第1ラウンド(R)は14番でチップイン、16番で8メートルを沈めてバーディー奪取。ボギーなしで今季自己ベストの69で首位と1打差の3位発進した。アップダウンもあってグリーンは小さく、連日の激しい雨風に見舞われた難コースで第2R、第3Rは71と粘りのゴルフを見せ、2位に入った22年大会以来となるトップ10入りを決めた。
「最悪ですね」―。前週まで出場18戦のうち14戦で予選落ちし、最高36位と低迷していた今季を、横峯は苦笑しながらそう評した。
復調のきっかけは、試合がなかった前週。夫でキャディーの森川陽太郎さんから「ゴルフに関する権限を全部くれたら、絶対に結果を出すよ」と言われた。試合までのスケジュール管理やスイング、試合中の食事、クラブセッティングやトレーニングなど、全てを夫に一任する決断をした。
14年に結婚後、メンタルトレーナーの肩書きを持ち、キャディーを務める森川さんから助言を受けながらプレーしてきた。だが、なかなか成績が伴わない中で、そのパワーバランスを変えた。
「私が7で、夫が3のバランスでやっていたけど、それを10―0に変えて夫が権限を持つ感じにした。(自分は)イエスマンじゃないけど、そういうイメージ。私がチームを引っ張ってきて、これだけ成績が出ていないのはチームの一番上が悪い。それを夫に変えて、成績が悪ければ夫が責任を取る。それくらい、10―0です」
開幕2日前の6日。「私より私のスイングを理解してる」と信頼する夫からの指導で劇的に変わった。
フェードが持ち球の横峯は「上位で戦うならドローが必要」と悩んでいた中、森川さんが知人から聞いたドローの打ち方をかみ砕いて、分かりやすく伝えてくれた。プロアマ戦後の練習場。ボールの位置などポイントを修正すると「ずっと打ちたいのに打てなかったドローが、急に打てるようになった」と声を弾ませた。
プロ22年目。国内で23勝を重ね、09年に賞金女王に輝くなど輝かしいキャリアを誇る中で、夫とはいえ、本格的なゴルフ経験はない人に“全権”を託すのは、なかなかできることではない。ラウンド中に夫に意見を言いたくなる時があっても「あれ?っと思っちゃダメ。私が出しゃばって言っちゃったなという時は夫に謝る」。何かを変えたい―。その強い一心での決断だったように映った。
ドローが打てるようになったことで「飛距離は5ヤードくらい伸びた。キャリーは240ヤードくらい」と横峯。12月に迎える40歳を前に、さらに飛距離を伸ばし、スコアにつなげられる姿には、並大抵ではない強さを感じる。「そこを見つけてくれたのも夫。7―3で私は夫の話を聞いてたと思ってたけど、それじゃダメだとなって10―0に変えた。ドローを打てるようになって、しっかり振れるようになった」と感謝する。
10~20代の若手が台頭する中、39歳のベテランが第一線で存在感を発揮。その原動力になっているのは、夫や21年に出産した男児の存在がある。「子どもを産んでも優勝したい。応援してくださる方に恩返ししたい。優勝して夫と息子と3人で優勝カップを持って写真を撮りたい。それが一番のモチベーションです」。家族とともに、まだまだ進化する横峯のプレーに注目したい。(ゴルフ担当・星野浩司)