
初優勝の大岩は仲間たちに水をかけられ手荒い祝福を受けた(カメラ・渡辺 了文)
◆男子プロゴルフツアー カシオワールドオープン 最終日(30日、高知・Kochi黒潮CC=7375ヤード、パー72)
3位から出て65と伸ばしたプロ7年目の大岩龍一(27)=フリー=が、通算21アンダーで並んだ砂川公佑(27)=オークラ輸送機=とのプレーオフ(PO)を2ホール目で制し、ツアー初優勝を決めた。3人に絞られた賞金王争いの一人に名を連ね、3年ぶり3度目出場を決めた最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップ(4~7日、東京よみうりCC=報知新聞社主催)で連勝し、大まくりの逆転キングを狙う。今季の初優勝者は11人となり、ツアー史上最多を更新した。
短いウィニングパットを沈めると、大岩の目からとめどなく涙があふれた。POの2ホール目でバーディーを奪い、勝負を決した。「長かった。もう勝てないんじゃないかと思うこともあった。今日もプレー中にそういう気持ちになった。なんとかいいゴルフをしようと心がけて、最後まで貫けた」。プロとしてのツアーデビューから7年目。ついに1勝を手にした。
今季2位が2度。味わってきた悔しさを、土壇場での強さに変えた。砂川に1打差で迎えた正規の最終18番パー5。3メートルのバーディーパットをねじ込み並んだ。POに向かう途中も冷静だった。「カートでの移動が、とても涼しくて落ち着いた」。3月に首都高速で追突事故に遭い背中を痛め、夏には逆流性胃腸炎に。苦しんだシーズンを全力で駆けた。
2023年のカシオワールドオープンで予選落ちし、シードを喪失した。あれから2年、味わったのは失意ではなく勝利の喜びだった。「2年前はけがやショットのイップスや、いろんなことが重なった最悪の年。忘れることはないけど、ここで初優勝ができた。最高の思い出も最悪の思い出も、この高知にある」とかみしめた。
ツアー31勝の片山晋呉を指導したことで知られる谷将貴コーチに、高校1年から師事する。最初の1、2年はラウンドも禁止。ハーフショットなどでひたすら基礎を固めた。コンパクトなスイングから放たれる精度の高いショットは鍛錬のたまものだ。「自分にゴルフを一から教えてくれた人。ここまで来られたのは全て谷さんのおかげ」。恩師の話題になると涙は止まらなくなった。
3年ぶりに王者の中の王者を決める、日本シリーズJTカップ出場を決めた。過去2度は賞金ランクの資格で出場したが、今回は勝者として臨む。賞金王への可能性も残した。金子駆大(こうた)、蝉川泰果との3人による争いに加わったことを知ると「え、3人しかいないの? なんだかうれしい」と笑顔になった。
優勝が最低条件で、トップの金子が7人までの2位、3人までの3位なら届かない。「駆大は、ここまで確実に賞金を積み重ねて2勝している。彼ありきでしか賞金王にはなれないけど、僕も優勝を目指す」。勢いとともに乗り込む東京よみうりで、大逆転での戴冠を狙う。(高木 恵)
◆最終戦での逆転賞金王 日本ゴルフツアー機構(JGTO)によると、1999年のJGTO発足後では3例のみ。
▽00年の片山晋呉 ファンケル・オープンin沖縄で優勝し、賞金ランク2位から771万3253円差をひっくり返す
▽17年の宮里優作 日本シリーズJTカップを制し、賞金ランク2位から1717万7831円差を逆転した
▽24年の金谷拓実 日本シリーズJTカップで3位に入り、288万9657円差の賞金ランク2位からひっくり返した
◆大岩 龍一(おおいわ・りゅういち)1997年12月17日、東京・板橋区生まれ。27歳。父・鉄生さんの影響で8歳で競技を始め、中学1年時に練習環境を求めて千葉に移った。東京・堀越高から日大に進学。2年で中退し、18年10月にプロ転向。19年にツアーデビュー。同学年にともに日本オープン覇者の岩崎亜久竜、片岡尚之。昨季の賞金ランキングは1756万9552円で49位。182センチ、92キロ。

