◆男子プロゴルフツアー 三井住友VISA太平洋マスターズ第1日(10日、静岡・太平洋C御殿場C=7246ヤード、パー72)
これが世界ランク7位の底力だ! 11年大会王者で3年ぶり出場の松山英樹(24)=LEXUS=が1イーグル、6バーディー、1ボギーの7アンダー、65をマーク。日本ツアー40戦目で初日の自己最少スコアを1打更新し、初の首位発進を決めた。単独首位発進は日米ツアー計125戦目で初。自身初の同一大会2勝となる、ツアー通算8勝目に向けて最高の滑り出しに、日本ツアーの選手らからは驚嘆の声が相次いだ。地元・静岡県出身で通算10勝の宮本勝昌(44)=ハートンホテル=が1打差2位。
寒風吹きすさぶ、雪化粧した世界遺産の麓で、松山が世界トップの地力を見せつけた。圧巻は517ヤードの18番パー5だ。ドライバーを強振してフェアウェー右へ。残り227ヤードからの4アイアンでの第2打は、高い弾道を描いてピン右4メートルを刺した。観戦に訪れた元プロ野球DeNA投手の三浦大輔さん(42)も、グリーン脇でみとれた一打に大歓声が響いた。「見に来たかいがあったね~」「良いもの見せてもらった」―。
松山本人は苦笑いでボールを見送った。「納得のいくショットではありませんでした」。それでも4メートルのフックラインを沈めて、この日出場84選手で18番では唯一のイーグル。単独首位に躍り出た千両役者に、観客から拍手が降り注がれた。
極寒の飛びにくい条件下で、11番はドライバーで293ヤード飛ばすなど、この日の平均飛距離は296ヤードで全体2位。「(調子は)良いとは思えない」としながらも「要所でチャンスにつけられたのがよかった」と話し、飛距離を武器に4つのパー5で4つスコアを伸ばした。
2週間前、世界選手権シリーズを7打差で圧勝した勢いを持続した。今大会前に練習ラウンドをともにし、実戦では初めて同組で回ったアマチュア・東北福祉大の後輩・比嘉は「一球に対する集中力。勝負の駆け引き。全てにおいてレベルが違った」と感嘆。1打差2位の宮本は「優勝? 松山に勝てる訳ないじゃない。(2週前にメジャー王者の)マキロイやステンソンでも勝てなかったんだからさ」と笑い飛ばした。
前日のプロアマ戦では首の辺りを気にしてショットで手を離す場面が続出し、状態の悪さを感じさせていた。宮里優作選手会長は「調整の仕方がうまい。調子を試合に合わせてくる」と分析。観戦した恩師・東北福祉大ゴルフ部の阿部靖彦監督(54)は「物事を逆算して、自分で考えてしっかりと準備できるのが松山なんです」と指摘した。
初日の観客数は前年比で500人近く増えた。「ギャラリーが喜んでくれると思うので、たくさんバーディーを取りたい」と松山。アマチュアだった5年前、プロツアー初Vを飾った思い出の地で新たな伝説を打ち立てる。(榎本 友一)
◆松山の首位発進 米ツアーでは過去4度いずれも首位タイで、うち1勝。15年5月のプレーヤーズ選手権で、67をマークして日米通算86戦目で初の首位発進(最終順位17位)。ほかに同年6月のメモリアル・トーナメント(8バーディーの64、最終5位)、16年2月のフェニックス・オープン(8バーディー、2ボギーの65、優勝)、同9月のツアー選手権(6バーディー、2ボギーの66、最終5位)。